"50億を消した傲慢行員の末路" 第21話
鈴は恐る恐る通話ボタンを押してに当てた。 「もしもし……鈴です」 「鈴かっ!」
話越しに鼓膜を破らんばかりの、狂気に満ちた母親の切り声――ではなく、事部の号が響いた。鈴はわずスマホをからした。 「お、3の案件で体何をやらかした……!」 「えっ、3……?」
その言葉を聞いた瞬、鈴の背筋にを浴びせられたような悪寒がった。 投資信託、齢の老夫婦、2000万円。そして当の支と緒に類を改ざした、あの暗い記憶。
「たった今、警庁の本庁から当社のコンプライアンス部に直接連絡が入ったんだ! おが3、渡辺という齢の顧客に対し詐欺同然ので融商品を売り付け、さらに私文を偽造したという具体な垂れ込みと完全な証拠データが、警察に持ち込まれたとな……!」
「なっ……」 鈴の顔から瞬にしてすべての血の気が引いた。なぜ、完璧に隠蔽したはずの過が今になって警察に――。
「言い持ち込んだのは、田グループの最の顧問弁護士だ! 田会は単なる座解約で終わらせるつもりはなかったんだ。おというの過の悪事をすべて洗いげ、当を社会に完全に抹殺しに来たんだよ!」
「ああ……あああ……」 鈴の喉から声にならないうめき声が漏れた。 自分が犯した「客を見す」という罪が、パンドラの箱をけてしまったのだ。
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会のりは自分だけでなく、の過のすらもすべて焼き尽くそうとしている。
「鈴、いいか! 警察はすでに詐欺事件として件に向けていている! としてはおを切庇うつもりはない! すべての責任はおと当の支にあると警察に報告する! おはもうただの懲戒解雇じゃ済まないぞ、逮捕される覚悟をしておけ!」
無質な子音が響き、話は切れた。
「健太ねえ、何て言われたの? から復帰できるのよね……?」 状況が理解できず、縋るような声で問いかけてくる母親の顔。鈴は絶望の縁から見つめした。そのだった。ピンポーーーン……。 静かなマンションの部に、玄関のインターホンがたく鳴り響いた。
「あら、誰かしら、こんなに……」 り子は脳気にちがり、モニターの画面を覗き込んだ。そして議そうに首をかしげた。 「健太、スーツを着た男のが3ってるわ……なんか、警察帳みたいなのを見せてるんだけど、あんた、何か落とし物でもしたの?」
その言葉を聞いた瞬、鈴の界は完全に真っ暗になった。 逃げなど、どこにもない。 自分が底辺だと見し、騙し、嘲ってきた者たちのいが、今、巨な鉄槌となって鈴のに振りろされたのだ。
鈴健太が逮捕された。その報は翌朝のつ葉若葉町支に、爆弾のような衝撃をもたらした。
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シャッターが閉まったままの暗いフロアで、勤してきた員たちは皆言葉を失い、ち尽くしていた。
「詐欺と私文偽造って……鈴君がそこまでやってたなんて……」 窓の堅員である伊藤が、青ざめた顔で元を抑える。の員たちも、昨まで同じフロアにいて偉そうにふんぞり返っていた同僚が犯罪者になったという事実に、震えが止まらない様子だった。
しかし、そので誰よりもい絶望の淵にたされていたのは、支の田浩司だった。 支の奥で、田は自分のデスクのに力なく座り込んでいた。目のには、本から派遣されてきた氷のようにたい目をした監査部の男たちがっている。
「田、鈴の容疑について警察から当へ詳細な報告と捜査への全面協力の請がありました」 監査部の男がテーブルのにどさりと分いファイルの束を置いた。田の臓が発のように打ち始める。 「3、鈴が別の支からここへ移してくる直に扱った渡辺様という齢顧客の投資信託の契約。これについて当の担当者である鈴と、直属の司であったあなたが元本割れの事実を隠蔽し、私文に増して顧客の老資1000万円を溶かした。この報告の内容に違いはありませんね」
田の喉がヒュッとなった。3のあの暗い記憶。