"井戸の謎と、睡眠薬入りの水" 第13話
私がの名をしただった。け太郎がくつぶやく。
「ああ、あのバカ夫婦のことだな。分かってる。ここではなんだ、部で話そう」
そう言って私のを握ると、彼はつんづんと廊を歩きした。
「へ、部でって、ちょっと! 面会は過ぎてるんじゃ……」
受付を振り返ると、女性が笑顔で頷く。
「野様より事に付き添い宿泊の申請がありましたので、OKです」
わず気の抜けた声がてしまう。
「ねえ、どういう……」 「まあ事はゆっくり話すさ」 「体何なのよ!」
文句を言いながらもけ太郎に引っ張られるまま、はき続ける。受付の女性がヒラヒラとを振るのが界の端に見えた。分からないことだらけだけれど、け太郎ののぬくもりだけは違いなく本物だった。ただ方で、指先に伝わってくる彼の力はい。やはり何かが起きている。
け太郎の部は廊の突き当たりくにあった。目調のドアにさなプレートで名が表示されている。
「さ、どうぞ」
冗談めかしてドアをける姿はいつも通りだ。だがノブを握るのきがぎこちないのを私は見逃さなかった。
「け太郎、あなた体……」
言いかけた私の背を、彼がそっと押す。そのままに入ると、像していたよりもずっと簡素な内が広がっていた。ベッドとさな棚。丸テーブルに子が脚。
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余計なものは切ない。
「随分とすっきりした部ね。がとは違いだわ」 「期滞用の施設だからな。それに俺はミニマリストなんだ」
おどけながらけ太郎は子に腰掛けた。
「夕飯まだだろ?」 「え? ああ、そうね。もびしてきたし」
言われて初めて空腹に気づく。緊張とりでそれどころではなかったのだ。
「ここは基本、になると堂でべるんだが……」
彼は壁にかかった案内表を指差した。
「体調が悪いや都があるは部でべられる。だから今だけ部にしてもらったよ。いつもだとし介助がいるが、ジコもいることだしな」 「介助って……ねえ、け太郎、何があったの? 勇気とかナさんに何をされたのよ」
け太郎のを取り、向いの子に座る。唇を噛む私の顔を、笑っているような泣いているような複雑な表で見つめながら、彼がいをいた。
「これは私の予だが、おそらくカナさんの料理には眠薬のようなものが混ざってたんだとう」 「眠薬? どういうこと……」 「野さん、お事お持ちしましたよ」
ちがろうとしたけ太郎をで制して、私はドアに駆け寄る。カートに乗せられてきたトレーをつ順に受け取り、丸テーブルへと運んだ。
無言のまま事が始まり、け太郎がスプーンを掴む。定なきのまま噌汁をすくい、ゆっくりとをつけた。
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配ですぐさま隣に子ごと移する。そんな私にちらりと目をやり、彼は照れたように肩をすめた。
「しはマシになったんだ。見てるともどかしいかもしれないけどな」 「これが……薬の響なの?」 「ああ、事と、あとスマホの操作だな。細かい作業が難しいよ。だからすまない、返事もできなくて。ここに来た頃はもぼっとしていたし、言葉もしおかしかったな」
いつも冗談ばかりをばしているけ太郎が、さすがに元気がないように見える。背をさすってやると、彼はことの顛末を話し始めた。
ジコが湯治へかけていったそのの晩から、カナさんが事を作ってくれるようになったんだ。
け太郎は今でもそのにされたものを鮮に覚えているという。スパイスの効いたカレー、やけに甘いドレッシングのかかったサラダ、ハーブのりがいスープ。販のルーを使わずに作るのが得なんだと、そう言っていたよ。
確かにカレーはうまかった。サラダとスープはちょっとにわなかったがな。せっかく作ってくれたのだからと、彼はされたものを完する。するとカナは異様なほどにんだという。
目をランランと輝かせて、「私の料理が気に入りましたか?」って。これがうまかったよと言うと、をギュッと握ってきたんだ。
その力がやけにくてな。
その晩、け太郎が呂を済ませて寝る準備をしていただ。寝を誰かがノックした。