"井戸の謎と、睡眠薬入りの水" 第10話
そこには詳細な所と共に、目名称として「齢者ケアセンター」と表示されてあった。
これ……!
わず瞬きをする。病院でもなければ買い物先でもない。どう考えても介護施設の類いだ。彼女の両親は私とけ太郎よりも若いはずだが、彼らに何かあったのだろうか。配になり、わずそこに並ぶ文字列を凝した。
すると次の瞬、からカナのが伸びてきて画面をオフにする。
「ねえ、どうしてカナさんのナビにあんな……」 「もう着きますよ」
先ほどとほとんど同じセリフを彼女はロボットのように繰り返した。言葉通り、はすでに見慣れた宅のをっている。
「ご両親は国よね。京の介護施設に何か用があったの?」 「ほら、着きました」
私の質問に切答えないその姿勢が、いよいよ恐ろしくじたと同だった。がのへと滑り込む。
「ありがとう。ごめんなさい、私何か気に触ること言ったかしら」
をりて荷物を抱えながら尋ねるが、彼女はやはり答えない。気にはなるもののもうに到着したのだ。け太郎の顔を見れさえすればできる。
あら? しかし違はすぐに訪れた。玄関にけ太郎の靴がないのだ。リビングに入っても、トイレや呂を覗いても彼の姿は見つからなかった。計を見る。夕方の、いつもならいるだ。
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「け太郎、階にいるの?」
階段からに向かって呼びかけただった。にを納めたカナが玄関から入ってきて、同にの息子夫婦の側から勇気が顔をす。
「勇気? お父さんらない? どこかにかけてるのかしら?」 「いませんよ」 「え?」
振り返ると、満面の笑みをたたえたカナと目がった。
「いないって、どこに?」 「父さんは認症で施設に入れたは」
言葉のが理解できない。はっきりと聞こえたはずだが、何を言っているのかさっぱりなのだ。
「え、な、何? 今何と言ったの?」
に届く自分の声が震えている。見慣れたがに線をわせてから、私は弾かれたように階段を駆けがった。
「あなた、いるんでしょ? てきてちょうだい!」 「だからいないって言ってるじゃん。というかお母さん、当の効果てるね。こうも元気だと。ああ、どうしようかな」
から階段をがってきた勇気が気に笑う。その顔を見た瞬、異常事態をらせる警報音が私ので鳴り響いた。目のにつが子を押しのけ、慌てて階へとりる。がもつれそうになるが丈夫だった。は得体のれない恐怖でいっぱいなのに、体からは力がみなぎっている。これが湯治のパワーだろうか。
玄関に置いたままだった荷物を抱え直し、靴を履いた。界の端に、靴箱のに置かれたけ太郎のの鍵を捉える。
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私は目にも留まらぬ速さでそれをひっつかみ、のに握りしめた。
「どこくんですか? お母さん、運転なんてできないでしょ」 「免許ならあるわ」 「でもここ数ほとんど乗ってないって聞いてますけど危ないですよ。齢者の暴運転なんてやめてくださいね」
にっこりと奇妙な微笑みを浮かべたカナが、玄関ドアので両を広げてち塞がる。
「どこにもかないでください。お夕飯作ってあるんです。おかけよりも緒にべましょうよ」
その言葉にぞっとしながらも、私はお腹に力を込めて叫んだ。
「退きなさい!」 「ああ、きな声ですね。そんなに元気だと困っちゃう。やっぱり絶対、私のご飯をべてもらわなきゃ」
け太郎に何かしたに違いない。彼女のセリフを聞き、私は確信した。瞬、驚ほどのりが体を貫く。
「退けって言ってるでしょ? 寄りをなめるな!」
まるで何かに体を乗っ取られていたかのように見えたカナの表が瞬驚きに歪む。その隙をついて私は彼女の脇をすり抜け、にびした。
「は、待て!」
背から鋭い声がんでくるが、振り返ることなどしない。私は庭を横切り、庫へと直線にる。臓の音がやけにきく響いていたが、議とは冴えていた。砂利を踏みしめる触が、今の自分が現実にっているのだと教えてくれていた。
「は? 待つわけないでしょ!」
息はがっているのに体は軽い。湯治で取り戻したのは膝と腰だけではなかったらしい。