"井戸の謎と、睡眠薬入りの水" 第6話
表も変えず、箸も止めず、彼はそっけなく答える。
「別に、普通」
その態度に私はわず押し黙ってしまう。すると事をらないけ太郎がを埋めるように続けた。
「普通か。そりゃ等だ。普通が番難しいからな」
もってけ太郎にママ友から聞いた話をしておきたかったが、このは帰宅が遅く伝えられていなかった。だからけ太郎がいつもの調子なのは仕方がない。私はそっと呼吸をえて、さらに突っ込んだ質問をしようとをいた。しかし次の瞬である。
「誰かから何か聞いたんでしょう」 「え?」 「分かりやすすぎ。お母さん、すぐに顔にるからな」
どこかびた態度で呆れたように首を振る勇気が、自分のる息子ではない気がした。
「先輩に対して失礼なことをした奴がいたから報告しただけだよ。バスケ部は特に関係が厳しいんだ。のを敬うのは当たりだろ」
目遣いにこちらを睨みつけ、すぐにまたおかずの乗った皿に線を落とす。
「ちょっと、何よ今の目は」 「おい、どうした? 何かあったのか?」
け太郎が配そうに首をかしげた。今ここで彼にも詳細を話しておくべきだ。
「実は……」 「うるさいな。別に何でもないって言ってるだろ」
勇気は箸を置き、子をきしませてちがる。
「ど、どうした? いきなりきな声して」 「部活のことまでししてくんな。
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うざいんだよ」 「おい、勇気!」
け太郎の呼び止めも無してリビングをびした勇気は、そのまま自にこもってしまった。
この来事からわずか週、勇気がバスケ部をやめたいと言いした。
「僕は本当は吹奏学部に入ってサックスを吹きたかったんだ」
被害者とした表で、く涙すら浮かべている。
「え、だったら吹奏学部に入ればよかったじゃない」 「僕は器用なんだろ。全部お母さんのせいじゃないか」 「私のせいって、体どういう……?」 「学の休みの宿題で作を作った、言ってだろ。『お母さんに似て先が器用だって』。だからどうせ楽器もうまくできやしないとったんだよ」
いよいよ勇気の瞳から粒の涙がこぼれ落ちる。
「それに部活やるならで練習するように個で楽器を買わなきゃダメなんだ。おで迷惑かけたくないとって。それで僕は何もかもしたんだよ」
何がどうなっているのか分からない。あの族で画用を切り張りした夜が、勇気のでは形を変えて記憶されているらしいことだけは理解できた。
またおについてもだ。がは裕福ではなくとも、け太郎の定した与のおかげで自由なく暮らせている。欲しいものを何でも買い与えるなどはしていないが、勇気に貧しいいをさせた覚えもない。
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彼のために昔からコツコツと貯めてきた貯だってある。必な楽器も相談してくれれば購入できたはずだ。それなのに彼は自分自を「俺はばかりをいられてきたかわいそうな」と位置づけている。
この以来、私とけ太郎は勇気と過ごし、話すをもっと増やすようにした。「反抗期」という言葉で片付けてしまうには、どこか引っかかるものがあったからだ。りっぽさやふてくされた態度よりも、「自分は遇だ」という物語をいつのにか彼自が信じ込んでいるように見えた。
夕にでお茶をむを作り、休にはけ太郎が散歩に誘う。そのでは勇気もそれなりに受け答えをする。楽しそうに笑うことだってあった。しかし話題が学や部活、友関係に及ぶと、自分を何かの被害者だと言い始めるのだ。
「先がちゃんと見てくれないから、僕ばっかり損するんだ。体周りのレベルいんだよ。そのせいで僕のやる気が削がれる」
私とけ太郎は顔を見わせ、言葉を選びながら返した。
「でも勇気は勇気なんだから、周りは気にせず自分のできることをやればいいのよ」 「環境が完璧なんてことはないんだぞ。世のにはいろんながいるからな」
けれどその度に勇気はどうせわかんないだろうと言いたげな目を向け、会話を閉じてしまう。
答えは正直なところかった。
、学と学してもその傾向は変わらない。