"「貧乏男」の通帳に5億円" 第12話
始まりの10万円
契約の、文さんは美優さんのに類を置き、賃の欄を指した。3万8000円。支払も、困ったに連絡する相も、美優さんが自分の帳へき込んだ。
「分からないところは、そのままにしないで聞いてね」
佐々さんが隣に座り、森さんが説済みの項目を確かめた。美優さんは設備の修理を頼むの連絡先を尋ね、答えを聞いてから頷いた。
この部を貸すのは文さんだった。蓮さんは会社の代表としてではなく、個の保証として契約を確認した。責任の限を示す極度額は60万円とかれている。
「この範囲を確認したで、引き受けます」
夫は説を聞き、署名欄に相沢蓮といた。私はそのを見ていた。15のでは最まで埋まらなかった所に、今、本が決めた名が残った。
美優さんも自分の名をき、文さんから鍵を受け取った。のひらに置かれたさな鍵を、彼女はしばらく握らなかった。の当たり方を変えるように、そっと傾けていた。
荷物を入れる、さんは備えつける洗濯のホースをつなぎ、漏れがないか確かめた。文さんは、美優さんが選んだ淡い黄のカーテンを抱えてきた。
「こっち、持ってもらえる?」
呼ばれた美優さんが窓際へった。文さんと並んでフックを掛け、最に自分で両側へく。
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午のが畳に広がり、空き部だった所に、彼女の鞄が置かれた。
隣の部から、林奈々さんが顔をした。21歳で、休の今は片づけを伝えると言って、雑巾を持ってきてくれた。
「私も3、ここに来たんです。最初は、誰に何を聞いていいか分からなくて」
奈々さんは自分の話だけをして、ゴミの収集がかれたを蔵庫に貼った。美優さんは、朝は何頃に駅へ向かうのかと尋ねていた。仕事へく毎が、会話のでしずつ形になった。
私は荷物が落ち着くのを待ち、鞄から封筒をした。の晩、計簿に挟んであったものを取りし、蓮さんと話していた。
「これを、美優さんが困ったに使えるおにしたい。私が決めていい?」
「真帆のおだから、真帆が決めていい。ただ、無理はしないでほしい」
私は自分の貯と計をもう度確かめ、それでも渡したいと答えた。婚の翌朝、夫へ渡そうとした10万円だった。
今、その封筒をテーブルに置くと、美優さんはを見て、慌ててこちらへ押し戻した。
「こんなに、返せるか分かりません」
「返す約束のおじゃないよ。具が悪いや、お料だけではりないに、使ってほしいの」
私は封筒を押しつけず、テーブルの央に置いたまま話した。
「受け取らなくても、この部の契約は変わらない。
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し考えてからでもいいよ」
美優さんはを閉じ、窓の方を見た。カーテンの裾がで揺れていた。しばらくして、自分の財布をし、初めてのお料が入るを帳で確かめた。
「お守りみたいに、持っていてもいいですか」
「もちろん。でも、必になったらちゃんと使ってね」
彼女は封筒を受け取り、仕事の類を入れた引きしにしまった。そのがれるまで、蓮さんは隣で黙って見ていた。
帰る、美優さんは玄関のまでてきた。私たちを見送ったあと、自分の鍵でドアをけ、もう度振り向いた。
「今は、ここに帰ってきていいんですよね」
文さんが、あなたの部でしょうと笑った。蓮さんは返事をしようとして、度を結び、それから、はいと答えた。
その夜、夫は古い申込を透な袋に入れ、類入れへ収めた。捨てるのでも、もう見るなと言うのでもなかった。しまったあと、卓に戻り、温かいうちに噌汁をんだ。
私は彼の袖を見て、次の休みの予定を聞いた。
「今度は蓮さんの番。自分の着を、緒に選びにこう」