"「貧乏男」の通帳に5億円" 第6話
妻を見したには渡せません
「500万円を資する約束は、度もしていません。今も、会社からも個からも資する予定はありません」
蓮さんの言葉に、姉の笑顔が崩れた。テーブルの央に置かれた聞を引き寄せ、記事のにを伏せる。
「ちょっと待って。今は、そういう話をしに来たんじゃ……」
「会社の名を使った案内を訂正するために来ました」
内装の担当者が、いていた帳にペンを置いた。蓮さんは用していた説文を差しし、資に関する契約ももないと伝えた。
「まだ正式なお返事をいただいていなかったので、私も確認のつもりで」
姉が言い終えるに、私は封筒から2枚のをした。受付の方で母が腰を浮かせたが、そちらは見なかった。
「返事は届いていたよ。先週の曜、1912分」
拒否の文面と、そのの『分かった』を指で示した。姉はに目を落とすと、私の首へを伸ばした。私はをテーブルに置き、両を膝へ戻した。
「お客さんへ送ったのは、その翌朝の1008分でしょう」
話をくれた女性が携帯を取りした。画面を確かめ、私の隣へ置く。姉から届いた案内が、印刷したものと同じ刻で残っていた。
「お返事が来るのき違いではなかったんですね」
女性の問いに、姉は答えなかった。いつも私のや仕事を評するには迷わない唇が、何度かいて閉じた。
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「相沢さん、せめて今だけは。あとで内で話せばいいでしょう」
「今だけ曖昧にすれば、皆さんが違った提でおやを使うことになります」
蓮さんは私の隣からかなかった。姉が私に向けた線を遮るように、テーブルへしを寄せた。
「妻を見し、断った返事までなかったことにするには、おを渡せません」
喉の奥がくなった。結婚の挨拶の、笑われたのは私たち2だったのに、私は自分がうまく説できなかったせいだとっていた。今は、取り繕う言葉を探さずに座っていられた。
内装の担当者が姉を見た。
「資が決まっていると伺ったので、程の相談までめました。資計画が変わるなら、着の準備は止めます」
「別の方法を考えますから」
「それが決まってから、改めてお願いします」
女性も、舗への品は見送ると言った。姉が用した棚の図面を返し、製作を始めるに確認できてよかったと、蓮さんへをげた。
「理さん。承諾を得ずに、資が決まったと案内された。それで違いありませんか」
女性がもう度尋ねると、姉の肩が落ちた。
「……はい。決まっていませんでした。すみません」
その言葉を聞いてから、私は残りのをしまった。勝に会社の名を使われたことへの説は蓮さんが引き受けたが、姉の案内を謝って回るとは言わなかった。
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「今来ていないにも、同じ内容を訂正してね。送った相を確認して、訂正した文面を私たちにも見せて」
姉は聞を畳み、頷いた。さっきまで皆へ見せていた会社の記事は、バッグの底へ押し込まれた。
をる、母が入まで追ってきた。
「もうし、理のも考えてあげられなかったの」
「私たちが約束したことにするのは、違うよ」
母の顔を見て答えると、っていたより声が普通にた。蓮さんがけてくれたドアの向こうから、たいが入ってきた。
駅へ歩きながら、私は夫の腕に触れた。彼はち止まり、寒かったかと聞いた。
「ううん。さっき、嬉しかった」
「真帆も、ちゃんと言ってくれたね」
握り返されたは温かかった。帰りに商で根と豆腐を買い、夕飯は鍋にしようと決めた。あれほど怖かった曜に、まだそんなが残っていた。
帰宅して、蓮さんの着をハンガーに掛けた。紺の襟が裏返り、内側に縫いつけられたい布が見えた。洗濯でくなった文字を、私はそっと指で伸ばした。
そこにかれていたのは、夫とは違う名字だった。
『沢』