"「貧乏男」の通帳に5億円" 第1話
10万円の封筒、5億円の通帳
「これは受け取れない」
結婚した翌朝、夫は私の差しした封筒にを伸ばさなかった。には10万円。費と用品を買うために、私が用した今の活費だった。
「なかった? りなければ、また2で考えよう」
「違う。君のおだから」
蓮さんはへき、引きしから1冊の通帳を持って戻った。縫い直した紺の袖が、テーブルの角に触れる。
「おの管理、君に任せたい」
受け取って最の記帳欄をいた私は、指を止めた。
残、512,635,418円。
「5億……?」
噌汁の湯気の向こうで、夫が頷いた。笑ってはいなかった。私は座名義を確かめ、もう度数字を読んだ。相沢蓮。昨、婚姻届に並べていた名だった。
5億1263万5418円。印刷会社で10、経理の仕事をしてきた私には桁が読める。読めるのに、目のの夫と結びつかなかった。
「これ、会社から預かっているお?」
「俺個のものだ。借りたでもない」
「でも、取りは18万円って」
「それも本当だよ」
返事を聞きながらページを戻した。3にきな入があり、それからは利息が記されているだけだった。欄には何もない。直の記帳まで、元のおはをつけられずに残っていた。
私は通帳を伏せ、夫の顔を見た。
「蓮さんは、何をしているなの?」
「あかりホームをやってる。代表は俺だ」
私のむコーポ川を管理している会社だった。
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漏りのに話した番号も、修繕のメモにかれた署名もっている。その名が、夫の勤め先だとっていた。
「管理と修繕の仕事は?」
「毎やってる。昨も、午は蛇を直しにった」
「18万円は、お料じゃなくて……」
「自分で決めた役員報酬の取りだ」
蔵庫のい音が、急にはっきり聞こえた。私は座っていた子を引き直した。今朝まで、私の21万円と夫の18万円で、この部の暮らしを続けるつもりだった。賃は6万2000円。働き続ければ活はできる。先のことは、しずつ備えればいいとっていた。
32歳の私は、蓮さんと会って4かで結婚した。34歳の彼を実へ連れていった、姉の理はお茶にもをつけずに笑った。
「そんな貧乏男と結婚してどうするの。あんたが養うつもり?」
夫ので言った言葉だった。母も姉を止めず、私にだけ「苦労するのはあなたよ」と言った。私は膝のでを握り、2で働くから丈夫だと答えた。
そのの帰り、蓮さんは改札ので私の歩幅にわせてち止まった。謝ろうとする私に、謝るのは君じゃないと言ってくれた。その言葉に救われたことまで、今はし痛かった。
「お母さんたちに、言えばよかったのに」
蓮さんはテーブルの通帳を見た。親指で、縫い目の浮いた袖を押さえている。
「言ったら、の話になるとった」
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「私とも?」
夫はすぐには答えなかった。昨までなら、言いにくいことを聞いてしまったとって、私の方が話を変えていた。その朝は、目をそらさずに待った。
「真帆さんに、どう話せばいいか分からなかった」
蓮さんが持参した荷物は、まだの隅で片づけきれずにいた。棚には昨写真館で撮った写真の引換券がある。式はしなくても、これから2で決めていけるとっていた。
い封筒を自分の方へ引き寄せた。10かけて貯めた312万円から、私が選んでした10万円だった。その隣に置かれた通帳がきすぎて、自分の差ししたものまでさく扱われた気がした。
「このおを持っていたことに、ってるんじゃないよ」
夫が顔をげた。私は封筒を折らないように、両で端を持った。
「私が2の活を計算している、蓮さんも隣にいたよね。どうして、そのに話してくれなかったの」