"車椅子の姑を1年間介護したのに、遺産は1円もいらない嫁が家を出た日" 第3話
実の子どもたち
午47分。
健太は、甲い子音で目を覚ました。昨夜は芳子を寝かせるだけで精いっぱいになり、礼のままリビングのソファで眠っていた。
枕元のベルは鳴りやまない。さな寝へ入ると、芳子はで掛け布団を押しのけ、苛った顔で息子を睨んだ。
「遅い。体を起こして。おむつも替えて。5半には朝でしょう」
健太は、綾が置いていった封筒をいた。
《4:00 体位交換・排泄確認》
《4:30 血圧・体温》
《5:30 透析の朝。分量に注》
《7:10 介護タクシー乗》
細かな注事項が2枚にわたって続いている。普段は寝ているに終わっていたことばかりだった。
台所へくと、蔵庫の棚には透析の朝が1分だけ用され、保容器に加まで貼られていた。健太は子レンジへ入れたが、芳子を起こせないためべさせることができない。薬の袋を見ても、かかさえ封筒を読むまでらなかった。
半に麻痺のある芳子は62kgある。健太は脇のへ腕を差し入れ、力任せに起こそうとしたが、芳子の体が傾いた。
「痛い! 綾はそんな持ち方をしないわよ」
倒れかけた体を慌ててベッドへ戻した瞬、健太の腰に鈍い痛みがった。封筒には、1で無理に移乗させないよう赤字でかれていた。
芳子は苛って枕をで叩いた。
「綾を呼び戻しなさい。
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あの子は1度も私を落としそうになったことなんてない」
健太は反論できなかった。綾がどうやって移乗させていたのか、度も見ようとしなかったからだ。
健太は姉の恵子に話した。
「今だけでいい。透析へ連れていくのを伝ってくれ」
「無理よ。子どもの弁当があるもの。だいたい、綾さんをらせたのはあなたでしょう」
昨夜、綾を「財産目当て」と笑っていた声とはえないほどたかった。
弟の徹にもかけたが、「これから仕事だから」と30秒で切られた。3で母親を守ると誇っていたはずなのに、午5を過ぎても玄関はかなかった。
健太は会社へ休むと連絡し、封筒にかれていた担当ケアマネジャー、に話した。は事を聞くと、透析先と介護タクシーへ連絡し、午9半にへ来た。
芳子の状態を確認したは、綾の介護記録のコピーを読みながら眉を寄せた。
「奥様1で、ここまでしていたんですか」
「にいたんですから、それくらいは……」
言いかけた健太を、の線が止めた。
「にいたのではありません。介護のために仕事を辞めたと、記録にあります」
現の介護保険サービスだけでは、綾が担っていた朝夕、夜、透析の付き添いまでは埋められない。は既の事業所と民サービスへ連絡し、今1かの暫定案を作った。
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「まず今週は期入所の空きを探します。ただし、医療対応と透析送迎の条件があるので、今申し込んでから期入所というわけにはいきません」
健太は会社へ何休めばいいのかと聞いた。は答える代わりに、族3の勤務予定をきす用を差しした。健太は姉と弟の名をいたところで、ペンを止めた。2の予定を何もらなかった。
午、届いた見積を見て、健太は印刷の誤りだとった。
訪問介護の追加、保険の見守り、透析の移送と付き添い、週2回の入浴介助。夜は族が対応する条件でも、自費部分は43万8000円だった。
「こんな額、毎払えるわけがない」
は見積を折らずに、健太のへ戻した。
「では、ご族3で分担するしかありません」
健太が族のグループチャットへ見積を送ると、恵子も徹も、既読をつけたまま返事をしなかった。