"車椅子の姑を1年間介護したのに、遺産は1円もいらない嫁が家を出た日" 第2話
午4のない部
綾が向かったのは実ではなく、夜診療をっているクリニックだった。
診察のい照のでの着物を脱ぐと、の甲から首にかけての疱が浮いていた。医師は却処置をしながら、浅達性Ⅱ度傷だと告げた。
「どうして、すぐでやさなかったんですか」
答えようとした綾は、を閉じた。夫が200万円の着物を拭いていたからとは、うまく説できなかった。
処置を終えたには付が変わっていた。スマートフォンには17件の着信に加え、健太からメッセージが並んでいた。
《親戚ので何を考えてるんだ》
《母さんが興奮して眠れない》
《の透析だけでも来てくれ》
傷を配する言葉は、1つもなかった。
護師が包帯を巻き終え、もう度受診するよう説した。綾は利きを使えないまま問診票に署名し、治療費の領収を財布へしまった。そんなさな作にもがかかったが、誰かに急かされることはなかった。
綾は返信せず、世田区内のワンルームへ入った。元の勤務先から徒歩10分。2週に契約し、最限の具と寝具だけを運び込んでいた部だった。
しい材と洗いたてのシーツの匂いがした。消毒液も、介護用おむつも、芳子が壁を叩く音もない。静かすぎる空につと、綾は自由より先にを覚えた。
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今までの活が異常だったと、体の方がまだ理解していなかった。
台所には、美咲が置いてくれたとおにぎりがあった。綾は子に腰をろしたものの、最初のをみ込めなかった。芳子の事なら米粒のさまで確かめていたのに、自分が最に温かいものをゆっくりべたをいせない。
黒いスーツケースをけると、教師代の紺のスーツのから、青いファイルが現れた。
表には、綾自の字でこういてある。
《田芳子 介護記録 365》
全126ページ。薬、事、排泄、体温、透析、芳子の暴言、族へ助けを求めたまで記録していた。別の封筒には医療用消耗品や介護、タクシー代の領収がごとに分けてある。
《618 午220分、痰が絡み訪問護へ相談》
《83 透析に発。健太へ連絡するも会のため帰宅できないとの返信》
《1012 恵子と徹へ交代を依頼。両名とも》
淡々とした文字を追うほど、綾の指先から力が抜けた。あの々の苦しさを忘れたから耐えられたのではない。忘れなければ、自分まで消えてしまうとったからいたのだ。
最初から復讐のためにつけたものではなかった。
半、担当ケアマネジャーに「このままでは綾さんが先に倒れます」と言われた。その夜、健太に訪問介護を増やしてほしいと頼んだが、返事は簡単だった。
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「に母さんを触らせるより、族がやった方が温かいだろ」
その“族”には、健太自は含まれていなかった。
ファイルのから、1のメッセージを印刷したが落ちた。
《正規採用の話はまたある。今は母さんを助けてくれ。俺が事にする》
当、綾は私の期限付き教員で、3連続の最評価を受けていた。翌度の専任採用を打診された直、健太にをげられ、辞退した。
綾はを拾い、青いファイルへ戻した。悔しさを説するためではない。自分が何を失い、誰の言葉で放したのかを曖昧にしないためだった。
ベッドに横になると、体が午4を待つように張った。しかし、この部にはアラームを設定していない。
綾はスマートフォンの源を切り、包帯を胸のに置いた。もう誰かの嫌を確かめてから眠る必はなかった。涙はなかったが、肩から力が抜けるまで、ずいぶんいがかかった。
その頃、田では、芳子が枕元の呼びしベルを何度も押していた。