"継母が私に遺した「価値ゼロ」の古民家" 第5話
ボルトのには錆つなく、品の属の鈍い輝きを放っている。
「これ……の点検なんかじゃない……」
誰かが、確な図を持って、このに「何か」を厳に封印したのだ。
はちがり、玄関に置いてあったリュックサックへ駆け寄った。底から取りしたのは、曜用の具セット。そのから最も太いレンチを握りしめ、再びへと戻った。
ボルトのにレンチを噛みわせ、渾の力を込めて体をかける。
ギギ……キリキリ……!
属が鳴をげるような軋み音をて、本目のボルトがゆっくりと回転を始めた。のひらに豆ができるほどの激痛がったが、は構わずレンチを回し続けた。
本、本、本、本。
された太いボルトを畳のに転がすと、コトンと々しい音が響いた。
は鉄板の端に指をかけ、腰を落として気に引きげた。
ズシン、という鈍い響きとともに鉄板がれ、にぽっかりと巨な角い暗黒がをけた。
の匂いはしなかった。
穴の底からちってきたのは、気と、品の械油、そして徹な属の無質な匂いだった。
は作業着のポケットからスマートフォンを取りし、ライトを点灯させた。
い烈な線を、真っ暗なの空へとまっすぐに照射する。
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が底を捉えた瞬、の全の毛穴が逆ち、息が喉の奥で完全に凍りついた。
そこにあったのは、の台である分い鉄筋コンクリートの基礎に埋め込まれるようにして鎮座する、の庫と見紛うばかりの、いつや消しブラックで塗装された
超巨な鋼鉄製耐庫
だった。
が掛かりでも絶対にかせないほどの、圧倒な質量と威圧。
庫の扉のには、世界な最級セキュリティメーカーのエンブレムが刻印され、耐・防盗・防の最等級を示すプレートが誇らしげにを反射していた。
「お母さん……これ、体……」
見は今にも崩れ落ちそうな廃。しかし、そのには、最の特殊防犯設備が隠蔽されていたのだ。
良子は、に無価値なボロを押し付けたのではなかった。
この巨な庫のを、欲な実子たちの目から完全に隠し通すための、最も全で誰も疑わない「隠し所」として、この里れた廃を遺したのだ。
はを乗りし、庫の扉の央をライトで照らした。
そこには、な真鍮製のダイヤルがつ。
そしてその直に、異様な形状をした鍵穴がをけていた。
通常の鍵が持つギザギザした平たい穴ではない。から細い溝が放射状に何本も伸び、歯の噛みわせのような幾何学な模様を描いている。
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は震えるで、首元からぶらげていたあのペンダントトップをした。
ライトのにかざしてみる。
の属の表面に刻まれた複雑な溝。先端の尖った突起。
「これだ……!」
母が病で、最期の力を振り絞ってのに握らせたあのペンダントトップ。それは装飾品などではなく、この鋼鉄の怪物をくためだけに特注で作られた、世界につだけの「鍵」そのものだったのだ。
鍵を鍵穴へとづけた、まさにその瞬だった。
ジリリリリリリッ――!!
静まり返っていた廃のに、をつんざくような激しい子音が鳴り響いた。
は臓がからびるほどねがり、わずにしていたペンダントトップを取り落としそうになった。
音の所は、作業着のポケットののスマートフォンだった。
息をえ、震える指で画面を確認する。表示されていたのは、昨アドレス帳から削除したはずの、志の携帯話番号だった。着信拒否の設定をすり抜けるためか、別の回線か非通設定を使ってかけてきているようだった。
は瞬迷ったが、え切ったを奮いたせ、通話ボタンをスワイプしてに当てた。
「……もしもし」
『よお、! きてるかあ!?』
受話器の向こうからび込んできたのは、ひどくずった、酔っ払ったような志の品のない声だった。
背からは音量のジャズ音楽と、シャンパングラスが触れう賑やかな音が漏れ聞こえてくる。