"継母が私に遺した「価値ゼロ」の古民家" 第2話
「……京都港区、宿区、世田区、渋区等に所する、被相続所の級宅ならびに敷、計件について」
具体な名が読みげられるたびに、向かいのの瞳がぎらぎらとした欲望ので輝きを増していく。
「これらの産および付随する切の権は、男・志、ならびに女・絵美子の名に、各分のの割にて均等に相続させる」
「よっしゃあっ!」
志がわずちがり、拳を井へ突きげた。絵美子も元をで押さえ、歓のあまり肩を震わせて甲い笑い声を漏らしている。
の胸の奥底へ、たい鉛の塊がドサリと沈み込んでいった。
やはり、自分には何も遺されなかった。あのの献、母のを握り締めて泣きかした夜の数々は、法のには銭の価値も持たない無な奉仕だったのだ。
しかし、佐藤弁護士は元の類から線をさず、淡々と次の条項を読みげた。
「……次に。養女・には、〇〇県〇〇郡に所する、ならびに建物棟を相続させる」
「……え?」
いがけず自分の名を呼ばれ、は弾かれたように顔をげた。
〇〇県の――それは、良子が若かりし頃、夫と会うにんでいたという、奥の寂れた集落にある古い本のことだった。何も放置され、漏りと虫いで倒壊寸だと、昔、母が苦笑いしながら話していた記憶がおぼろげに蘇る。
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その瞬、志が腹を抱えて爆笑を始めた。
「ギャハハハッ! なんだそれ! 〇〇県の奥のあばらかよ! おいおい、タダでも誰も引き取らねえような産廃じゃねえか!」
絵美子もちがり、級バッグをわざとらしく揺らしながら、志とハイタッチを交わした。はの目ので、葬儀の席では決して見せなかった満面の笑顔を浮かべて狂乱している。
絵美子は勝ち誇った顔でに歩み寄り、爪先からのてっぺんまでを舐めるように見ろした。
「やっぱりお母さんは、血の繋がった実の子の私たちが番かったのよ! あんたみたいな赤のは、田舎のボロがお似いね! これまでタダ働きご苦労様! 介護ヘルパーの代わりくらいにはなったわよ!」
鋭い嘲笑の刃が、の無防備な胸を容赦なくえぐり取っていく。
おが欲しかったわけではない。ただ、母にとって自分は族だったのだと、娘としてされていたのだと、ほんのしでも実したかっただけなのだ。
界が歪み、涙が零れ落ちそうになるのを、は唇を噛み切らんばかりの力で耐えた。
「……おめでとうございます。私はこれで、失礼いたします」
掠れた声をどうにか絞りし、は々とをげてちがった。
「ああ、もう度と俺たちのに顔を見せるなよ。
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貧乏がうつるからな!」
志の酷な罵声を背に受けながら、は応接のいドアを押しけた。
廊にても、背からはいつまでもの品のない笑い声が反響していた。
エレベーターホールへ向かってで歩いていると、背からりの音が追いかけてきた。
「さん、お待ちください!」
振り返ると、佐藤弁護士が申し訳なさそうな顔をして息を切らしていた。にはさな茶封筒が握られている。
「さん……こちらが、その方の物件の権利と鍵です。……専として率直に申しげますが、あのは老朽化が著しく、資産価値は実質ゼロ、むしろ解体費用や固定資産税を考えれば完全な負債です。もし相続放棄をご検討されるなら、期限は今からか以内です。どうかご無理をなさらないでください」
佐藤弁護士の目は、同に満ちていた。
は震えるで封筒を受け取り、く礼した。
「……ありがとうございます、佐藤先。度、自分の目で確かめてから決めます」
へると、初のぬるいがの頬を撫でた。
作業着のポケットに突っ込んだ。その指先には、母が息を引き取る数分、酸素マスクのから震えるでの掌に押し込んできた、古びたのペンダントトップが、微かにを帯びて握りしめられていた。
都内のれにある築の造アパート。