"20年の仕送りを止めたら、義母の嘘が暴けた" 第9話
扉の脇の郵便受けには、チラシや督促状のような封が溢れそうに詰まっている。
インターホンを押すと、数分の沈黙の、チェーンがかかったまま玄関の引き戸がわずかにいた。
隙から覗いたキミ子の顔は、化粧気もなく、目のには黒々とした隈が張り付いていた。あの法事の席で見せびらかしていた尊で傲な面はどこにもなく、まるで追に怯える老のような衰えを見せていた。
「……何の用だい。仕送りを再する気になったのかい?」
掠れた声で問いかけてくる義母に対し、正が歩にた。
「母さん、けてくれ。話があるんだ」
「話なんかないよ! おを振り込まないなら、あんたたちと話すことなんて何つ――」
「駄箱の横の、証券会社の封筒のことだ」
正がく告げた瞬、キミ子の息が喉で詰まった。
数秒の膠着の、カチャリとチェーンがされ、戸が々しくかれた。
居に通されると、部のはもろくに点けられておらず、底えがしていた。いつもなら座卓のに並べられているはずの級な茶菓子も、急須すらされない。
千鶴と正は並んで座卓のに正座し、対面に座るキミ子を見据えた。
キミ子は膝ので固くを握りしめ、線を泳がせている。
「お義母さん」
千鶴がを切った。その声は、極めて穏やかで、しかし寸分の逃げも許さない刃のような徹さを秘めていた。
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「單刀直入に伺います。久美さんに、毎いくら渡していたのですか?」
キミ子の肩がビクッとねがった。
「な……何のことだい! 私が久美におを渡すわけないだろうが!」
「嘘をつかないでください」
千鶴はバッグから、先の法事のメモと、親族グループLINEのスクリーンショットを印刷したを取りし、座卓のに置いた。
「久美さんは以、玄関先であなたに『今ちょっとりないんじゃない? 千鶴さんに言えばいいのに』と言っていました。そして、私たちが仕送りを止めた途端、久美さんは実に寄り付かなくなり、の鳴りいを所のたちも目撃しています。……久美さんに渡していたおの所は、どこだったのですか?」
キミ子は唇をワナワナと震わせ、畳の目を見つめたまま押し黙った。
正がたまらず、机にを乗りして問い詰めた。
「答えろよ、母さん! 千鶴が、パートを掛け持ちして汗垂らして面した万円を、そのまま久美に横流ししてたんじゃないのか!?」
「違うよ!!」
キミ子が突如として切り声をげ、座卓を両でバンと叩いた。
「横流しなんかじゃない! あの子は私の娘なんだよ! 孫の塾代や私の授業料がりないって泣きついてきたから、し都してやってただけじゃないか! 母親が娘を助けて何が悪いんだい!」
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「じゃあ、その原資はどこからていたんですか!?」
千鶴が鋭く問い詰める。
キミ子は顔を歪め、吐き捨てるように叫んだ。
「あんたからの万だよ!! あんたが毎黙って振り込んでくる万があったから、久美に遣いを渡して、所の集まりでいい顔をして、孫たちに盤振るいできたんじゃないか! それがなくなったら、私の顔がたないだろうが!!」
居の空気が、ピシリと凍りついた。
やはりそうだったのだ。
千鶴が、度も欠かさず送り続けた千百万円は、義母の最限の活を支えるためなどではなく、義妹・久美の贅沢な暮らしの補填と、キミ子自の歪んだ見栄の原資として、湯のように浪費されていたのだ。
「……じゃあ、母さん」
正が震える声で、核の問いを突きつけた。
「駄箱に隠した、あの証券会社の封筒は何なんだ? 母さん、本当にがなくて困ってたのか?」
キミ子の呼吸が荒くなり、線が激しく揺れた。
「そ、それは……関係ないだろう……!」
「関係なくないわ」
千鶴がちがり、玄関へ向かおうとした。キミ子は血相を変えてちがり、千鶴の腕を掴もうとしたが、そのは空を切った。
「やめろ! 勝に触るんじゃないよ!」
正がに入ってキミ子を押し留めると、千鶴は駄箱の横のさな棚から、鍵の刺さったままの引きしをけた。
に入っていたのは、通の封筒だけではなかった。
の信託、証券会社、そして方の通帳の束――計冊の通帳と、最の資産残報告が、然とファイルにまとめられて眠っていたのだ。