"20年の仕送りを止めたら、義母の嘘が暴けた" 第1話
の彼岸の涼なが、庭の古い柿のの枝をサワサワと揺らしていた。
黄くづき始めた葉が折、縁側の戸の溝へとカサリと音をてて落ちていく。築を超える古びた造本の畳の座敷には、義父の回忌法を終えた親族同、総勢あまりが座になって座っていた。
千鶴(ちづる・歳)は、台所で煮物の温め直しと追加のビール瓶の栓抜きをく済ませ、盆を両で抱えて座敷へと戻ってきた。、こので法事や親族の集まりがあるたびに、千鶴が座敷で腰を落ち着けて料理をにできたことなど度もない。常に台所と座敷を往復し、誰かのグラスが空けば注ぎ、めた吸い物をげ、皿を取り替えるのが「男の嫁」としての暗黙の役割だった。
「ほら、千鶴さん。こっちのおじさんのビールも空いてるわよ。気が利かないわねえ」
座の座布団にふんぞり返るように座る義母・キミ子(歳)が、丸々と太った指先で酌をしようとしていた親族を顎で指した。
「あ、申し訳ありません。すぐにお注ぎします」
千鶴は努めて穏やかな声でをげ、瓶ビールを両で持って親族のグラスへと注ぎ回った。
キミ子の嫌は、法が始まってからずっと最潮だった。緑の品な紬の着物にを包み、化粧をした顔には、親族の老としての誇らしげな笑みが張り付いている。
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それもそのはず、先ほどから所の参列者や縁の親族をに、自話が止まらないのだ。
「いやあ、お義姉さん。相変わらずお元気そうで何よりですな。肌の艶もいいし、とてもを過ぎて暮らししてるとはえん」
正の叔父が刺をつつきながらおだてると、キミ子は待ってましたとばかりに扇子をにして胸元を仰いだ。
「そりゃあねえ、やっぱり子供たちのおかげですよ。うちの息子夫婦は本当にしっかりしててね、毎欠かさず仕送りをして私を支えてくれてるのよ。おかげで私は何の苦労もなく、幸せな老を送らせてもらってますよ」
「まあ、息子夫婦が毎仕送りを! それはですなあ。今そんな孝息子夫婦、滅にいませんよ」
周囲から「さすが男の正さんだ」「しっかりした息子さんを持って幸せですね」と賞賛の声が次々とぶ。キミ子は満そうに目を細め、何度も頷きながらビールを喉へと流し込んだ。
千鶴はその景を、座敷の隅で膝を揃えて座りながら、めた目で見つめていた。
キミ子はでに吹聴するとき、必ず「息子夫婦が支えてくれている」と言う。しかし、実際に毎いくらの額が送られているのかは絶対ににしない。そして何より、その仕送りのおがどこからているのか――千鶴が代の頃からパートの事務仕事を掛け持ちし、々の費を切り詰めて面してきた血と汗の結晶であることなど、この座敷にいる誰としてる由もなかった。
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千鶴の隣に座る夫の正(まさし・歳)は、親族からの褒め言葉に居が悪そうに苦笑いを浮かべ、元の鉢を見つめたまま押し黙っている。
そこへ、キミ子の実の娘であり、正の妹である久美(くみ・歳)が、ビールの瓶を片に座敷の真んへとみてきた。派な豹柄のブラウスにブランド物のぶりなネックレスをらせた久美は、焼けした顔にら笑いを浮かべていた。
「そういえばお母さん、来はお友達と伊豆の温泉旅にくんでしょう? 名旅館を予約したって言ってたじゃない」
「ええ、そうなのよ。所の婦会の皆さんにお誘いいただいてね。たまには骨休めをしてこようとってね」
キミ子が嬉しそうに頬を緩めると、久美はあざとい線をすっと千鶴の方へと向け、わざとらしく座敷に響くような声で言った。
「いいわねえ、お母さん。でも旅って何かとおがかかるじゃない? お産代とかお遣いとか、丈夫なの? ……まあ、りなければまた千鶴さんに頼めばいいものね!」
座敷の空気が、微かに揺らいだ。
親族のが「ハハハ、頼りになるお嫁さんがいてですな」と調子をわせた。