"夫の通帳を奪った義母が銀行で凍りついた日" 第6話
「幸さんがくなったの相続続きは、まだ完していませんけれど」
「だから! 今その遺産分割の話をしてるんだろうが!」
茂が苛たしげに湯呑みを置いた。
「兄貴は遺言も残さずにんだんだ。だったら、民法の規定通りに分けるのが法な筋ってもんだろ! 俺たち内には正当な権利があるんだ!」
「そうよ、私はあの子を産んだ母親なんだからね!」
よしが勝ち誇ったように顎を突きす。
親戚たちは沈黙を守り、たみは両で顔を覆うようにして俯いていた。 久子はく礼し、静かにちがった。
「皆様のご見は、正確に記録いたしました。私からの正式な回答は、、面にてお伝えいたします」
「っていつだよ! 逃げる気か!」
茂の号を背に受けながら、久子は度も振り返ることなく茂のをにした。
玄関をたところで、背からりに追ってきたたみが、久子の腕を掴んだ。 見ると、たみの目には涙が浮かんでいた。
「久子さん……。言っちゃいけないとってずっと黙ってたんだけど……やっぱり、あんたに話さなきゃならない」
「たみさん……?」
「のお彼岸の法のよ。あんたがお茶を替えに台所へった、あの分のにね……よしさんが、座敷でとんでもないことを言い放ったのよ」
初のたい枯らしが、の柱をかすかに鳴らしていた。
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たみは周囲を警戒するように見回し、声を震わせながら語り始めた。
「あの、親戚同が集まった座敷でね、あんたが席をした途端、よしさんが声で言ったのよ。『子供のいない嫁に、宅の財産を円たりとも渡す気はない。幸がんだら、もも会社も全部茂に継がせる。あの嫁には、着の着のままでてってもらう』ってね」
久子の臓が、トクンとたくねた。
「はっきりと……そうおっしゃったのですか?」
「ええ、言句違わずに覚えているわ。あんまり酷い言いだったから、私、背筋が寒くなったもの。……でもね、久子さん。本当に恐ろしかったのは、そのの幸ちゃんの姿よ」
たみは久子のをぎゅっと握りしめた。
「幸ちゃん、座敷の隅の座子にく腰掛けて、目を閉じてじっと座っていたの。体調が悪くて横になりたいはずなのに、母親が自分の嫁を罵倒する言葉を、言も逃さず、全部そので聞いていたのよ」
「……主は、何か言い返しましたか?」
「いいえ。言も。ピクリともかず、ただ拳をぎゅっと握りしめて耐えていたわ。そして、あんたがお茶の急須を持って戻ってきた瞬、何事もなかったように目をけて、普段通りの顔でお茶を受け取ったの。……あの子、あんたを傷つけたくないで、ぬまでそのことをあんたに隠し通したのよ」
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たみの目から粒の涙が零れ落ちた。
「私、ずっと胸が痛くてね……。でも、さっきのよしさんの仕打ちを見てたら、もう黙っていられなかった。久子さん、あんた、幸ちゃんを信じてあげてね。あの子は、絶対にただ黙ってやられるような男じゃないわ」
「……たみさん、ありがとうございます。そのお彼岸の法は、正確には何何でしたか?」
「よ。分のだったから、違いないわ」
久子は礼を言い、に自宅へと戻った。
仏の座卓のに、帳、計簿、護ノート、そして領収の束を広げた。 久子の融事務員としての分析が、恐るべき正確さで付のパズルを組みてていく。
【(分の)】 法の席で、義母が「嫁には円も渡さない、すべて茂に移す」と暴言を吐く。幸はそのすべてを黙って聞いていた。
【】 法からちょうど。 幸が寝で久子に「名義を理しておきたい」と言い、枚の類に実印を押させた。 (※計簿の薬局の領収の付と致。「しい痛み止めに切り替わった」)。
【】 実印を押させた。 幸が度のを押して、「ちょっとてくる」とした。 夕方、度分までががり、布団に倒れ込んだ。
「に類を準備し、そのにどこかへ提しにった……」
これは、いつきのではない。 緻密に計算され、寸分の狂いもなく実された「段取り」だ。 幸は母親の暴言を聞いた瞬から、自らのに久子がどのような目に遭わされるかを完全に予測し、病魔に侵された体を極限まで酷使して、徹な防壁を築きげていたのだ。