"夫の通帳を奪った義母が銀行で凍りついた日" 第5話
よしは座卓のに両をつき、久子を顎でしゃくった。
「この嫁ね、幸の通帳を隠して、何千万もの預をどこかへ移しちゃってるんだよ。残はたったの万。務のも全部使い込まれただったのさ」
親戚たちのにざわめきが広がった。叔父の誠が眉をひそめて久子を見る。
「久子さん、それは本当なのかい?」
「事実ではありません。務の帳簿も々の納記録もすべて保管してあります。ご覧になりたい方にはいつでも示いたします」
久子が帳を膝のに置いて答えると、よしがで笑った。
「見せる見せるって、都のいい数字を並べた類を見せられても誰も騙されないよ! ……まあいいわ、通帳の細かい話はだ。今集まってもらった本当の理由はね、あののことだよ」
よしは座卓を囲む親戚たちを見回し、決定事項であるかのように言い放った。
「久子さん。あんた、あのからてってちょうだい」
部の空気が、ピシリと凍りついた。
「あのはね、うちのが遺してくれたに、宅の板を掲げて建てたなんだよ。宅の血を引くが受け継ぐのが当たりだろう? 子供のいないあんたが、であんな広いにみ続ける理由がどこにあるんだい?」
「あのには、私と幸さんが、共に暮らしてきました。
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宅ローンの返済も、私の退職から部を繰りげ返済して完済させたものです」
「まわせてもらってただけじゃないか!」
よしは声を張りげた。
「嫁に来たってことはね、宅のに入れてもらったってことなんだよ! 入れてもらった分際で、跡継ぎのも産まないで、まで丸ごと自分のものにしようなんて、そんなかましい話が世で通るとってんのかい!」
久子は何も言い返さず、膝のの帳をいた。 【 親族会議。義母より自宅からの退求。『跡継ぎを産まない嫁に権利はない』との発言】。
ペンをらせる久子を見て、よしが苛たしげに叫ぶ。
「何いてるんだい、気の悪い! メモなんか取ったって、あんたのが良くなるわけじゃないんだよ!」
横から茂がを挟んできた。
「姉さん、お袋の言い方はきついけど、俺も同じ見だよ。であのにんでたって維持費がかかるだけだ。務だって、社がんだのに板だけ残しても仕方ないだろ。の横田さんたちだって、腕があるんだから所でいくらでも雇ってもらえる。会社を畳んで、と建物を売却するのが番理なんだ」
茂は懐から卓を取りし、得満面に叩き始めた。
「この辺りの線価と隣の相から計算すると、と建物を売れば千百万円にはなる。
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諸経費を引いて残ったを、法定相続分に従ってお袋と俺と姉さんで分けるんだ。お袋はそので俺ののくに部を借りるか、うちで同居すればいい。営宅の階は階段がきつくて膝に悪いってから言ってたからな」
「それとね」と、よしが満そうに付け加えた。
「仏壇と位牌は、うちで引き取るからね。血の繋がっていないよそのの女に幸を拝まれたって、あの子も成仏できないだろうからさ」
叔父の誠が「よしさん、そこまで言うのは……」とを挟みかけたが、よしは聞こえないふりをしてお茶を啜った。
久子は、座卓のを静かに見つめていた。 すべての線が、本に繋がった瞬だった。
このたちが本当に欲しかったのは、通帳の残などではなかったのだ。 最初から狙いは「と」だった。 を売り払って得たで、息子の茂は子供の学費や宅ローンの補填をし、義母を引き取って同居する算段をつけていたのだ。
夫が病で苦しみ、久子が眠を削って病していたあの半の――。 この母と息子は、夫の枕元に度も見いに来ず、夫がんだにそのをいくらで売り、どのように分けするかを密かに話しっていたのだ。
「の名義は、どうなっているとお考えですか?」
久子が静かに尋ねると、茂は当然のように胸を張った。
「兄貴の名義に決まってるだろ! 親父がんだ、男の兄貴が単独で相続したんだからな」