"夫の通帳を奪った義母が銀行で凍りついた日" 第4話
通帳の残が万千円なのは、何の自然もありません」
然と並んだ数字の証拠。信用庫仕込みの完璧な帳簿だった。
しかし、よしはそのファイルに線を落とすことすら拒絶した。汚らわしい虫でも見るようにファイルをで払い除け、切り声をげる。
「そんな切れ、あんたが夜な夜なでっちげたに決まってるじゃないかい! 数字なんていくらでも誤魔化せるんだよ! あんた、自分の実の座か、隠し座に何千万円も移したんだろう!」
「私の個座の取引細も、信用庫で発してもらえます。今すぐお見せしましょうか?」
「見たって分かるわけないだろう! あんたは元員なんだから、プロので隠蔽してるに決まってる!」
「……せとおっしゃるからすと言っているのに、見ても分からないとおっしゃるのですか?」
久子の静かな返しに、よしは言葉を詰まらせた。 横から茂が苛たしげにを挟む。
「なあ、姉さん。俺たちだってこんなこと言いたくないんだよ。でもさ、兄貴が寝たきりだった半、をかせたのは姉さんだけだったんだ。誰も見てないところで、いくらでも引きせただろ」
「だから、何を引きしたとおっしゃるのですか。具体にいつ、いくらの使途があるのかを指摘してください。に調査を依頼すれば、過分の全取引履歴が示されます。
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付と額を言ってください」
「それは……あんたがってることだろうが!」
よしが机を拳で叩いた。
「の減らない嫁だね! 体ね、あんたが子供を産んでりゃ、こんな面倒なことにはならなかったんだよ! 孫がいれば、その子に財産を継がせれば済んだ話だ! 宅のの財産を、赤ののあんたがでネコババするなんて、世が許すとってんのかい!」
以、親族の集まりのたびに投げつけられてきた刃のような言葉だった。 子供ができないことを、よしは常に久子の「罪」として責めててきた。かつて幸が度だけ『母さん、その話は度とするな』と珍しく声を荒らげたことがあったが、よしは『本当のことじゃないか』とせせら笑い、それ以来、幸は親族の席で完全にを閉ざすようになったのだ。
久子の腹の底に、氷のようなたさが広がっていった。 だが、表は切崩さなかった。
「使い込みを主張されるのであれば、証拠を揃えて法なでお話しください。論にはお答えできません」
「何さ、その態度は! いい気になりおごって! 、親戚同を集めるからね! 宅の全員ので、あんたの悪事を全部暴いて、このから叩きしてやるから覚悟しなさい!」
よしは通帳を乱暴にカバンに突っ込むと、茂を連れて嵐のようにちっていった。
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かれたままのファイルを、久子は静かに閉じた。 答えのかれた類を目のに差しされても、も読もうとしない々。い込みと欲だけでのを踏みにじろうとする々。
久子は帳をき、今のやり取りを無にメモした。 【 午分。義母および茂が来訪。帳簿の確認を拒否。当な銭求および暴言】。
を交えず、ただ事実だけを記録する。それが、これから始まる戦いにおける久子の最の武器だった。
翌の午、指定された所はよしの営宅ではなく、茂の自宅だった。
畳のの央に置かれた座卓を囲むように、親族たちが座になって座っていた。 座にはよしがふんぞり返り、その隣に茂と、妻の美(歳)がさくなって座っている。美はエプロンの端を両で固く握りしめ、度も久子と目をわせようとしない。 さらに、父方の叔父である誠夫婦、従姉のたみ(歳)、そして縁の親戚が名。
久子は襖のすぐ、座の末席に正座した。 湯呑みが全員に配られたのを見届けたよしが、わざとらしく咳払いをし、を切った。
「皆さん、急に集まってもらってすまないね。今来てもらったのはでもないよ。くなった幸の財産を、宅のとしてどう始末をつけるか、内できちんと決めておかなきゃならないとったからさ」