"夫の通帳を奪った義母が銀行で凍りついた日" 第3話
夕方にはが度分までねがり、呼吸は荒く、識が朦朧としていた。
久子は夜通し氷枕を取り替え、汗を拭き続けた。どこへっていたのかを問い詰める余裕などなかった。聞けば夫が余計な気を使って無理に説しようとすることが分かっていたからだ。
だが、あの解な「の」。
その、幸は寝の布団のに類を広げ、久子にこう言っていたのだ。
『久子、ここに実印を頼む。俺がけなくなったのために、と仕事の名義を理しておきたい』
あの、久子のを支配していたのは、の週に医師から告げられた「余命半から」という宣告だった。夫が自分の期を悟り、具体な始末を始めているという事実に打ちのめされ、類の条項なども読めなかった。ただ震えるで、幸が指差した箇所の欄に実印を押した。
『控えはどうするの?』と尋ねた久子に、幸は『先に預ける』とだけ答え、類を茶封筒に戻してカバンにしまった。
その翌週には、その封筒はのから跡形もなく消えていた。 「先」というのが、務の顧問税理士なのか、それとも登記を頼んでいた司法士なのかも、久子は確認しなかった。確認することは、夫のを認めることのようにえて怖かったのだ。
融事務に以携わり、客には「必ず約款の細部までお読みください」
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と言い続けてきた自分が、自分の庭の最類をも読まずに実印を押した。
「あのは……あので、体どこへっていたの……?」
久子は護ノートを胸に抱きしめ、暗い部ので、静かに記憶を繰り寄せていた。
よしが通帳を持ちってから週の午、再び玄関の戸が激しく叩かれた。
ガタガタガタッ!
「けなさい! 久子さん、けなさいよ! 鍵を変えたのかい!?」
久子が玄関へ向かうと、内側の掛けがりていた。あの以来、よしが鍵を使って勝にがり込んでくるのを防ぐため、内側から閂を差すようにしていたのだ。
掛けをして戸をけると、よしが仁王ちしていた。そのろには、腕組みをした茂が嫌そうにっている。
よしは靴を脱ぐよりもく、にした通帳を久子の胸元へ叩きつけるように突きしてきた。記帳されたばかりの械油とのインクの匂いがツンとを突く。
「どういうことなのよ、これ!!」
よしの顔はりで真っ赤に鬱血し、額の血管が青く浮きていた。
「どういうこと、とは何でしょうか」
「とぼけるんじゃないよ! この通帳、残が万千円しか入ってないじゃないかい!!」
よしは玄関のがり框に通帳を叩きつけた。
「幸はも務をやってたんだよ! 親父が遺したに派なを建てて、職を何も顎で使って、羽振りが良かったはずだろうが! それが、息を引き取ったの残がたったの万!? 残りのはどこへやったんだい! あんたが隠したんだろう!!」
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茂も靴を脱いでズカズカとがり込み、畳のに落ちた通帳を拾いげてページをめくった。
「姉さん、これ、過半の記録、活費と医療費の引きししかないぞ。会社の運転資や定期預はどうなったんだ? 兄貴が倒れてからの、全部姉さんが握ってたんだろ!?」
久子はを見据えたまま、歩も引かなかった。
「おがりください。すべてご説します」
久子はを仏の隣の部へ通すと、棚から冊のキングファイルを机のに置いた。
「幸さんが倒れてから、宅務は規の受注をすべて止しました。だった件の現を職さんたちと責任を持って最まで仕げ、材料費、注費、労災保険料、そして請け業者への支払いをすべて完させて、きれいに清算したのです。ここに、そのすべての領収と納帳があります」
久子はファイルをめくり、付順に並んだ伝票を指し示した。
「夫の治療費も、差額ベッド代、先医療の費用、額療養費制度の還付に至るまで、すべてこの計簿と座の記録に円の狂いもなく記帳されています。この半、活費用の座には夫の傷病当とが入り、そこから々の費と医療費がていくだけでした。