"母の保険金3,000万円、夫は「もう諦めろ」と言った" 第8話
「犯罪だと!? お、実の姉貴を犯罪者呼ばわりする気か!」
幸介が突如として逆し、ソファから勢いよくを起こした。顔を真っ赤にし、麻紀を威圧するように仁王ちになる。
「俺に言われたって困るんだよ! を借りたのは姉貴の会社だろ! 俺が使ったわけじゃないのに、なんで俺が毎毎おにネチネチ責められなきゃならないんだよ!」
「あなたが『困ってる族を助けるのが当然だ』『お母さんだってぶ』と言って、私の背を押したからでしょう! 連帯保証として公正証にサインまでした張本が、どので『俺は関係ない』なんて言えるの!?」
「だから、それは姉貴を助けるためだったんだろ! 族いの俺の優しさを仇で返す気か!?」
幸介の瞳には、妻の母が遺したを守れなかったことに対する申し訳なさなど、微もしなかった。あるのはただ、自分の居の良い平穏を乱されたことへの苛ちと、妻を見す歪んだ特権識だけだった。
麻紀は徹な差しで、り狂う夫を見据えた。
「あなたがに入って話をつける気がないのなら、私にも考えがあるわ。、お義姉さんのオフィスへ直接向いて、従業員や取引先ので、公正証を突きつけて話しってくる」
「は……? おい、正気かよ!」
幸介の顔から瞬にして血の気が引き、次の瞬にはかつて見たこともないような凶相へと歪んだ。
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彼は麻紀の両肩を乱暴に掴もうとを伸ばしたが、麻紀が歩を引いたため、そのは空を切った。
「馬鹿なこと言うな! 会社に乗り込むなんて非常識だろ! 社が借取りてられてるなんて噂が広まったら、姉貴のメンツは丸潰れじゃないか! 会社が傾いたらどう責任取るんだよ!」
「メンツ……?」
麻紀の喉から、乾いた笑いがこぼれ落ちた。
「お義姉さんの世体やプライドは守られて、私の母の命の代わりである千万円は踏み倒されてもいいって言うの? 私の尊厳は、お義姉さんの見栄以だって言うのね?」
「だから、そういう話をしてるんじゃないだろ! 体な、今さら姉貴のところへったって無駄なんだよ!」
「どうして無駄なのよ」
「あいつに、そんなあるわけないだろ!!」
幸介の絶叫が、狭いリビングに炸裂した。
その瞬、部の空気が完全に凍結した。
テレビのお笑い番組の笑い声だけが、まるで異世界の来事のようにく響いている。
麻紀の呼吸が止まった。
「……今、なんて言ったの?」
幸介は自分のを押さえ、瞬だけ狼狽の表を浮かべた。しかし、すぐにき直ったように眉を吊りげ、唾をばしながら言い放った。
「言った通りだよ! 姉貴の会社にはな、最初から千万円を括で返せるようなキャッシュなんてどこにもなかったんだよ! の入なんてものは、おを納得させるための方便だ! ない袖は振れないんだから、今さら会社に鳴り込んだって円もてこねえよ!」
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「あなた……最初からそれをっていて、私に貸させたの……?」
「会社を回すためににが必だったのは本当なんだよ! だから……もう諦めろ!」
「諦めろ……?」
麻紀の元から、すーっと血の気が引いていく。
「そうだよ、諦めろ! 族なんだから痛みを分かちうのが当たりだろ! おは母親の遺産、命の代わりだって喚くけどな、んだはおなんて使えないんだよ! おは俺の料で何自由なく飯がえてるんだから、その千万円がなくなったところでから飢えにするわけじゃないだろ!」
幸介のから吐きされる言葉のすべてが、き母のと、麻紀の余の尊厳を、靴で容赦なく踏みにじっていた。
「裁判汰にでもする気か? 内同士でそんなことしたら、親戚から笑い者になるのはおだぞ! 弁護士に払うだって馬鹿にならないんだ。どうせ最は泣き寝入りするしかないんだから、さっさと忘れて元の活に戻れ! それが賢い妻のやり方ってもんだ!」
幸介は言いたいことだけをまくしてると、満そうにを鳴らし、寝へと向かって歩きした。
「ねえ、幸介」
麻紀の静謐な声が、夫の背に突き刺さった。
幸介がドアノブにをかけたまま、億劫そうに振り返る。