"母の保険金3,000万円、夫は「もう諦めろ」と言った" 第3話
言うの忘れてたよ」
(嘘だわ……)
麻紀の直が警鐘を鳴らした。幸介の態度は、の来客に驚くのそれではない。らかに、あらかじめ約束していたを迎え入れる態度だった。
玄関の鍵をけると、佳代はのいりを振りまきながら、同然の勢いでがり込んできた。
「ごめんなさいねえ、麻紀ちゃん! 休にいきなり押し掛けちゃって! ほら、これ、麻紀ちゃんが好きだって幸介から聞いてた駅のタルト。みんなでお茶にしましょ!」
「あ……ありがとうございます。どうぞ、がってください」
麻紀は努めて丁寧に応対し、リビングのテーブルへ案内した。
茶を淹れ、ケーキ皿を並べるも、佳代は落ち着きなく周囲を見回し、最のイベント業界の苦労話や、掛けている催事の規模がいかにきいかを方に喋り続けた。
そして、世話が分ほど続いた頃、佳代はふっと茶のカップを置き、居まいを正した。
その目から笑いが消え、獲物を見据える肉獣のような鋭いが宿る。
「麻紀ちゃん。今はね……実は、ちょっと事な相談があって来たの」
麻紀のが止まった。隣に座る幸介を見ると、夫は俯き、自分の膝のに置いた拳をじっと見つめている。
「相談……ですか?」
佳代はを乗りし、麻紀の元へ自分の顔をづけた。
「うちの会社ね、先、政が絡むきな音楽フェスの運営を本任されたのよ。
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規模もきくて成功だったんだけど……お役所仕事特の入遅れがちゃってね。来末にはドカンときな売掛が入るんだけど、今の従業員の料と、次の会の仮押さえ費用のて替えがどうしてもなっちゃって……に、資がショートしそうなのよ」
麻紀は黙って聞いていた。会社の資繰りの話を、なぜ義理の妹である自分にするのか。
そして、佳代のから、信じがたい言葉が放たれた。
「それでね、麻紀ちゃんにお願いがあるの。……かだけでいいの。千万円、貸してくれないかしら?」
リビングの空気が、瞬にして凍りついた。
計の秒針がチクタクと刻む音だけが、異様なほどきく鼓膜を打つ。
「……え?」
麻紀の喉から漏れたのは、かすれた空気の音だけだった。
「かだけでいいのよ。来のには、自治体と協賛企業から確実に千万円くの入があるの。だから、本当にそのを凌ぐためのなて替えなのよ!」
佳代は、まるで所のスーパーで「醤油をし貸して」と頼むような、軽々しい調子でまくしてた。
千万円。
それは、数に麻紀の座へ振り込まれた、母の保険と円の狂いもなく同額だった。
なぜ、佳代がその額を正確にっているのか。
麻紀は弾かれたように、隣の幸介を凝した。
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幸介は麻紀と線をわせようとせず、テーブルの目を指先でなぞりながら、居悪そうにを縮めている。
保険のと、その正確な額をっているは、この世に麻紀と幸介のしかいない。
「……お義姉さん。千万円なんていう、私のでかせるような額ではありません」
麻紀は何とか声を絞りし、たく言い放った。
「分かってる! 無茶なお願いだってことは百も承よ!」
佳代はちがり、テーブル越しに両をわせてをげた。
「でもね、今さらに融資を申し込んでも審査にか以かかるのよ! 今週に当てがつかないと、会社が渡りをして倒産しちゃうの! そうなったら、以いる従業員とその族もに迷うし、内から破産者がたら、幸介の会社でのだって悪くなるかもしれないでしょう!? 麻紀ちゃんのお母さんが遺してくれた、切なおだってことも幸介から聞いてるわ。だからこそ……族の危を救うために、力を貸してほしいの!」
やはり、幸介がすべてを漏らしていたのだ。
麻紀が母をくし、嘆に暮れながら受け取ったおであることも、それが今、付かずのまま普通預座に眠っていることも。
臓が鐘のように激しく脈打ち、体の血液が逆流していくようなりと恐怖がこみげた。
これは相談ではない。幸介と佳代が結託し、最初から麻紀の特財産をターゲットにして仕掛けられた、周到な奪計画だ。