"昭和51年、帰宅目前で消えた25歳女性社員" 第4話
「幸区の〇〇町までお願いします。〇〇の裏の通りです」
「はいよ」
ドアがバタンとい音をてて閉まり、は滑るように駅のロータリーを滑りした。部座席の窓ガラスにをもたせかけると、窓の向こうで駅のネオンサインが流れるようにざかり、いのへと消えていく。
夜2335分。それが、同僚たちが目撃した川島みち子の最の姿となった。
曜の朝、午7。
川島の台所には、の澄んだ朝のが差し込んでいた。母の静枝は、噌汁の鍋をお玉でかき混ぜながら、居の柱計を見げた。
いつもなら、みち子が起きてきて「お母さん、おはよう」と割烹着を着け、朝の配膳を伝い始めるだった。昨夜遅かったとはいえ、みち子は休の朝であっても無断で寝坊するような娘ではなかった。
「みち子、起きてるかい? 朝ご飯ができるわよ」
静枝は廊へて、みち子の部の襖を軽くノックした。返事はない。
審にいながら襖を細くけた瞬、静枝は息を呑んだ。
畳の畳のには、昨晩敷かれたままの布団がたく横たわっていた。シーツには皺つなく、枕も置かれたまま。誰もを踏み入れた形跡すらなかった。机のには几帳面に並べられた経理関係の参考と、予定がき込まれたカレンダー。
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通勤用のバッグも、脱ぎ捨てられたもない。
「お父さん! ちょっと来て!」
静枝の鳴のような叫び声に、聞を読んでいた父・清治(52歳)が血相を変えて駆け込んできた。
「どうした、朝から騒々しい!」
「みち子が……みち子が帰ってきてないのよ! 布団も敷かれたままで!」
清治は目を丸くし、部のを見回した。
「そんな馬鹿な……。昨夜、タクシーで帰ると話があったんだろう? どこか同僚のに泊まったんじゃないのか?」
「そんなこと度もしたことのない子よ! 泊するなら必ず話を入れてくる子なのよ!」
清治は慌てて居の黒話へ駆け寄り、精の代表番号へダイヤルした。しかし、受話器からは虚しく呼びし音が鳴り響くだけだった。週休制が普及し始めていた当、曜の事務所には当直の守しかおらず、社員の内線につながる気配はなかった。
居てもってもいられなくなった静枝は、コートを羽織ると所の交番へとった。
息を切らしながらび込んだ交番には、20代半ばの若い巡査が、類の理をしていた。静枝は昨夜からの経緯を必にまくしたてた。
「娘が、昨晩の会社のみ会から帰ってこないんです! 事故に遭ったんじゃないでしょうか、すぐに探してください!」
しかし、巡査は困惑したように眉根を寄せ、お茶を差ししながら宥めるような調で言った。
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「お母さん、落ち着いてください。娘さんは今でおいくつですか?」
「25歳です!」
「25歳……派なじゃないですか。曜の夜ですしね、お酒の席のなら、同僚や気の置けないお友達のに急遽泊まることになったとか、そういうことじゃないですかね。事件や事故なら、今頃警察か病院から連絡が入ってますよ。まだをてから半ちょっとでしょう? もうし様子を見てみてください」
「そんな適当なこと言わないでください! あの子は絶対にそんな無責任なことをする子じゃないんです! 何かあったに決まってます!」
「そうおっしゃられてもね……のや泊の能性もありますから。曜になっても会社に勤せず、連絡も取れないようでしたら、本署の方へ正式な捜索願をしにってください」
淡な杓子定規の対応に、静枝は唇を噛み締め、震えるで交番のドアを押しした。
絶望と焦燥に満ちた週末が始まった。
川島では、黒話のベルが鳴るたびに両親が受話器へとびついた。しかし、受話器から聞こえてくるのは親戚からののない連絡や、違い話ばかりだった。みち子の友関係をいし、古い所録を引っ張りして片っ端から話をかけたが、誰としてみち子の方をる者はいなかった。
曜の朝。
みち子は、定刻の8を過ぎても精の通用をくぐらなかった。
清治は勤務の仕事を休み、泣き腫らして目の周りを赤くした静枝のを引いて、川崎警察署の刑事課へと向かった。