"「2度と戻るな」姑と500万円の偽造委任状" 第19話
私ので氷のように固く閉ざされていたが、ほんの数ミリだけ溶けるのをじた。
夫は私のを壊した敵ではなかった。
ただくて、逃げることしからなかった未熟なだったのだ。
そして今、その未熟さと向きい、変わろうとしている。
私は何も言わず、ただ静かに頷いた。
それだけで弘には私の気持ちが伝わったようだった。
背で義母がに崩れ落ち、子供のように泣き叫び始めた。
「弘!弘お!」
私を捨てるな、親孝者と、ありとあらゆる言葉を投げつけてくる。
しかし弘はもう振り返らなかった。
私も義母の方を見ることはなかった。
私と弘が、2階から私の物のコートとしの荷物を運びしているも、義母のリビングからの泣き声は止まなかった。
全てをに積み終え、私たちがガレージで別れの挨拶をしようとした、まさにそのだ。
ピンポーン。
静まり返ったの空気に、無質なチャイムの音が響いた。
こんな曜の昼がりに、体誰が来たというのだろうか。
玄関のドアがく音がして、聞き覚えのある女性のい声が響いた。
「お姉ちゃん、はるこよ」
その声を聞いて、弘の顔がすっとたくなった。
私もその声の主が誰であるか、すぐに気づいた。
病院で義母と楽しそうに話をしていた相。
義母の妹である、叔母の子だった。
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子の無邪気で残酷な声は、ガレージにいる私たちのにもはっきりと届いた。
「お姉ちゃん、務のパンフレット持ってきたわよ。弘くんのおで、どこからリフォームする?」
弘は私と顔を見わせ、静かに玄関へと歩きした。
それは義母の最の嘘が完璧に崩れる瞬だった。
子のるくどこか甲い声が、埃っぽい玄関に響き渡った。
「お姉ちゃん、入るわよ」
それは違いなく、私が病院の廊で録音したあの声だった。
子はガレージにいる私と弘に気づくことなく、勝ったる様子でがり込んできた。
には分い沢のあるパンフレットを何冊も抱えている。
子は嫌よく喋りながら、リビングのドアをけた。
「ちょっとお姉ちゃん、務のカタログ、最のもらってきたわよ」
そしてそのにち尽くした。
に座り込んで泣いている義母の姿を見て、ピタリとを止めたのだ。
しかし子は、この部に漂う異常な空気を全く別のに受け取ったようだった。
子の線が、ろから入ってきた私をたく射抜いた。
子は皮肉っぽく笑った。
「あら、弓さん。まだいたの?ちょうど良かったわ」
子はリビングのテーブルに散乱するゴミを無造作に払いのけ、パンフレットを広げた。
「あなたがていくなら、このの回りを全部しくしようとってね」
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それは最式のシステムキッチンと、級なユニットバスのカタログだった。
子は勝ち誇ったように言った。
「弘くんの500万円の定期預、無事に解約できたんでしょう。お姉ちゃんが言ってたわよ。邪魔な嫁を追いして、息子のおで老を適にするんだって」
その無邪気で残酷な言葉が落ちた瞬、に座り込んでいた義母がい鳴をあげた。
義母は慌ててちがろうとした。
「は、子!やめなさい!」
しかしがもつれて再びに倒れ込んだ。
血の気の引いた顔で必に妹を止めようとを伸ばす。
しかし子は、姉の焦りに全く気づいていない。
子は笑いながら言った。
「何言ってるのよ、お姉ちゃん。もう隠さなくていいじゃない」
子は自分の描いた完璧なシナリオを、誇らしげに語り続けた。
「弘くんも弓さんなんかに気を遣うことないわよ。あんな気の利かない嫁より、私とお姉ちゃんが弘くんの面倒をしっかり見てあげるから」
私は言も発せず、ただ静かにその景を見つめていた。
りはない。
あまりにも滑稽でれな姉妹の姿に、ただたい呆れをじていたのだ。
これが、義母が私を追いしてまでに入れたかった幸せな老の正体だった。
ずっと黙っていた弘が、く氷のような声で呼びかけた。
「叔母さん」
子は笑顔で振り返った。
「なあに?」
弘はたく言い放った。
「その500万円はもうありません」