"「2度と戻るな」姑と500万円の偽造委任状" 第4話
「あそこ、私のじゃなかったみたいだから」
私の言葉に、弘は息を呑んだ。
私は淡々と事実を告げた。
「8んだわ。毎ご飯を作って掃除をして、親戚が来れば気を遣って迎えた。でも、お義母さんの言で、私のも靴も全部にされた」
弘の息遣いが、話の向こうで荒くなる。
私はさらに言葉を続けた。
「私が戻ったら、また同じことが起きるよ」
弘は焦ったような声をした。
「母さんに謝らせる。俺からきつく言うから」
弘の言葉を、私はたく遮り切った。
「謝ってもらうことが、条件じゃないの」
弘は絶句した。
謝れば済む。
今までずっとそうやって、そのしのぎの言葉で終わらせてきた弘には、私の図が理解できないのだろう。
弘の声には、苛ちと困惑が混じっていた。
「じゃあどうしろって言うんだよ」
私はスマートフォンの画面を見つめながら、はっきりと言い放った。
「あなたが決めて。これから誰とどう暮らすのか。弓、もう同じで2ともなんとかしてくれ、は無理だから」
私は弘の返事を待たずに、方に話を切った。
弘はきっと今頃、玄関にち尽くしているはずだ。
義母は弘に、自分がどれほど酷いことをしたのか、本当のことは言っていないだろう。
けれど弘は、もなく気づくはずだ。
私が玄関の棚のに置いてきた、8使い続けたあの鍵のに。
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そして、こののにもう私のが1つも残っていないという事実に。
話を切った、私は実のさな洗面所で、鏡のの自分を見つめた。
目はし赤く腫れていた。
それでも表は議なほど穏やかだった。
今は曜だ。
いつも通り、科クリニックでの仕事がある。
義母はきっと、私が泣き崩れて仕事を休むとでもっているだろう。
でも私はそんなにくない。
私には自分で稼げる仕事がある。
そして何より、帰るべき本当の族がいる。
朝7半。
台所からは焼き魚と噌汁の温かい匂いが漂っていた。
私が実をようとすると、母のが笑顔でお弁当を渡してくれた。
母は私の背を優しく撫でた。
「無理しなくていいからね。いつでも帰っておいで」
その温かい言葉に、私はさく頷いた。
に乗り込み、エンジンをかける。
いつもなら井から向かう、慣れた通勤だ。
しかし今は、違うをっている。
窓から見える景が、いつもより鮮やかにじられた。
誰かの嫌を気にする事なく、自分のでハンドルを握る。
たったそれだけの事が、こんなにも息のしやすい事だったのか。
私は改めて、その自由を実していた。
助席には、さなボストンバッグが1つ置かれている。
昨夜、無造作にへ放りされた荷物のから、必なものだけを詰め込んできた。
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失ったものはきいかもしれない。
でも私のにある自分の尊厳だけは、絶対に放してはいけないとに決めていた。
同じ頃、夫の弘は静まり返った井のリビングにっていた。
テーブルのには、義母の節子が自分のためだけに買ってきた菓子が置かれている。
弘は、私の荷物がに放りされていた理由を改めて義母に問いただした。
「母さん、弓が実にったくらいで、あそこまでる必があったのか」
節子はコーヒーをすすりながら、悪びれる様子もなく答えた。
「あの子が勝にてったのよ。私がし注しただけで、急に声を荒げてね」
弘は眉をひそめた。
「声を荒げた?」
節子は劇のヒロインのように、わざとらしくため息をついた。
「そうよ。このにはもういたくない、親の方が事だってヒステリーを起こしたの」
節子はカップを置き、弘を見た。
「私だってしてきたのよ。あの子、最事も抜きばかりで。活費だって、どこにどう使っているのか怪しいものだわ」
今までなら、弘はその言葉を鵜呑みにしていた。
そうか、弓も疲れていたんだな。俺から言っておくよ。
そうやって、全てを曖昧に終わらせていたはずだ。
しかし今朝は違った。
弘のには、先ほどの話での私の声が残っている。
あそこ、私のじゃなかったみたいだから。
その声はヒステリーでもなりでもなかった。