"「クソ臭い農家」と再開発地8割の地主" 第6話
何かに決着をつけた男の、峻厳な静けさをたたえている。
父は私を見て、静かに声をかけた。
「、まだ起きていたのか」
私が泣きじゃくりながらすがりつくと、父は私のを優しく撫でた。
「お父さん、私、もうダメかもしれない」
私は涙声で訴える。
「全部、めちゃくちゃになっちゃった」
父は力く首を振った。
「丈夫だ、」
父は私の目を見つめる。
「おがめちゃくちゃになったんじゃない」
父はくつぶやく。
「めちゃくちゃになるのは、あいつらの方だ」
父の言葉には、私のらないいりと、絶対な自信が宿っていた。
父は私の背を叩く。
「の朝、おはいつも通り会社にきなさい」
父は力く言う。
「何も恐れることはない」
父はちがる。
「お父さんは、し古い友たちに挨拶回りをしてくるよ」
父はそう言うと、斎に入り、垢で汚れた古い帳をパラパラと捲った。
そこには、方のしがない農には似いな名が並んでいる。
誰もがるような企業の代表者たちの名が、ずらりと並んでいた。
私は父の背を見つめながら、ある違をじずにはいられなかった。
なぜ父はこれほどまでに落ち着いているのか。
そしてあの屈辱の席で、なぜ言も言い返さなかったのか。
父の沈黙は、諦めではなかったのだ。
それは獲物を確実に仕留めるための、徹なまでの観察期だったのかもしれない。
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窓のでは、嵐を予させるようないが吹き始めていた。
太陽が昇る、佐藤総建設の黄代は終わりを告げることになる。
彼らがクソ臭いと罵ったその男が、彼らの運命を握る唯の物であることに、彼らはまだ気づいていないのだ。
翌朝、私は腫れぼったい目を擦りながらリビングに向かった。
そこには、昨夜の劇が嘘のように穏やかな顔で、いお茶をすする父の姿があった。
父はいつも通り、の染み込んだ作業着に着替え、玄関先で靴を履こうとしている。
私はげに問いかけた。
「お父さん、本当にくの?」
私は躊躇う。
「会社なんて……私が」
父はにかっと笑って答えた。
「ああ。今は事な寄りいがあるんだ」
父はを振る。
「、おもシャキッとして会社にきなさい」
私はうつむく。
「でも、健さんが変な噂を流していて……」
父は真剣な顔になる。
「噂なんて、真実のみのにはのようなものだ。気にする必はない」
父は優しく微笑む。
「おはただ、誠実に仕事をすればいい」
父の言葉には、議な説得力があった。
父がをた、私はふと父の斎に置いてあった物に目を留めた。
古ぼけた箱が、しだけいていることに気づいたのだ。
私はづいて、を覗き込んだ。
そこには、私がこれまで1度も見たことがない、の鳳凰が刻まれた勲章や、数くの表彰状が入っていた。
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「お父さんのもの……?」
表彰状の宛名は、全て「佐藤郎」となっている。
そこには、農林産臣の名や、本を代表する巨コンツェルンの会の名が並んでいた。
さらに箱の底には、1冊の通帳があった。
何気なくページをいた私は、その数字を見て、危うく通帳を落としてしまうところだった。
そこに記されていた残は、私の像を遥かに超える文学な数字だったのだ。
般企業に勤める私の収が、砂浜の砂1粒にえるほどの莫な資産。
実は私の父、郎は、ただの農ではなかった。
この方帯の広なを所する、本でも指折りの主だったのだ。
それだけではない。
父は最の農業技術を世界に輸する、巨農業法の創業者でもあった。
今はその実権をに譲り、自分は趣で細々と田畑を耕していると言っていたが、実際には違う。
政財界に巨な響力を持つ、農業界のドンと呼ばれるだったのだ。
昨夜、義父の正尾さんが誇らしげに語っていた都内の規模再発プロジェクト。
そのプロジェクトがめられているの8割は、実は父が経営する法の所であった。
そして、佐藤総建設がメインバンクとして頼っている央。
その最株主もまた、父の古いだったのだ。
私は自分の父親の正体に、震えが止まらなかった。