"何番まで落ちたら離婚するの" 第12話
お母さんをにしておけなくなる。
検証1:週テスト 目標58点。 ・基礎問1〜4を図に誤答。 ・難問のみ正解させる(勉の能力は落とさないこと。いつでも戻せるように)。 結果:お母さんは驚愕。お父さんは「無理させるな」とを挟んだ。会話発。
検証2:例テスト 目標52点。 結果:ファミレスでが本気で鳴りって、お互いの顔を見た。 普段は目をわせもしないのに、僕のせいで、はお互いを睨みつけた。
次回の課題: 何点まで落とせば、お父さんはをていかなくなるか? 何番まで落ちれば、は婚届を完全に破り捨ててくれるか?』
「あああ……っ……」
私の喉から、獣のような掠れた鳴が漏れた。 膝の力が完全に抜け、ノートを抱きしめたまま、私はフローリングのに額を擦り付けた。
違った。 あの子は、勉が嫌になったのではなかった。 受験の圧から逃げしたかったのでも、私に反抗したかったのでもなかった。
翔太は、命がけで舵を取っていたのだ。 今にも暗礁に乗りげて々に砕け散りそうな、え切ったこの庭というを。 自分の成績という唯の舵輪を、必でに切りながら。 良い点数を取れば父親がり、悪い点数を取れば母親が狂う。 その狭で、歳のが、たったで計算を叩き、配点を逆算し、自分のを削りながら、両親を繋ぎ止めようとしていた。
広告
『僕が位を取ったら、は婚するの?』 あのファミレスでの言葉は、あの子の精杯の、最の詰まりの告だったのだ。 もう、満点を取ってもは笑わない。 かといって、点数を落とす実験をしても、は互いを罵りうだけで、やり直そうとはしてくれない。 どうすればいいのか分からない。 どうすれば、僕のは壊れずに済むのか。 あの子は、あのえ切った瞳の底で、私たちにそう叫んでいたのだ。
「ごめんね……ごめんね、翔太……っ!」
誰もいない子供部で、私はノートの面を涙で濡らしながら、何度も何度もにを打ち付けた。 母親失格だ。 失格だ。 子供の成績をきがいにしていたのではない。 私は、え切った夫から逃げるために、夫婦の破綻から目を背けるために、息子を『盾』にしていたのだ。 「この子のために」という美名のもとに、夫を繋ぎ止めるための質として、翔太の首に『優秀な成績』という鎖を巻きつけていたのは、ならぬ私自だった。
ガチャリ、と静かにドアがく音がした。
涙で霞む界をねげる。 部の入りに、濡れた髪にタオルをかけた翔太がっていた。
パジャマ姿の息子は、にへたり込んでノートを広げている私を、静かに見つめていた。 クッキー缶は、ベッドの横に無防備に転がっている。
秘密が暴かれた。
広告
普通の子供なら、取り乱して泣き叫ぶか、ノートを奪い返そうとするだろう。 だが、翔太はかなかった。 逃げすことも、声を荒げることもせず、ただ静かに、その細い指先で首元のタオルを握りしめた。
その顔には――歳の子供が浮かべるはずのない、すべてを諦めきった、のような切が漂っていた。
「見ちゃったんだ」
翔太の声は、驚くほど静かだった。 滴が、毛先からポタリと青い絨毯のに落ちた。
「翔太……これ……あなた、ずっと……で……」 私は言葉にならず、ただ胸元にノートを抱きしめて震えた。 ちがって抱きしめてあげたかった。でも、今の私の汚れたで、この子に触れることすら許されないような気がした。
翔太はゆっくりと歩み寄り、私の目ので、すとんと正座をした。 そして、濡れた瞳で、私の目をまっすぐに見つめた。
その唇が、微かに震えながらかれる。
「お母さん」
息子のから零れ落ちたのは、私の魂を根底から叩き折るような、あまりにも優しく、あまりにも絶望な提案だった。
「……点じゃ、りなかった?」
「え……?」
「僕が、平均点くらいじゃ、は鳴りうだけで、仲直りはしてくれないんだね」 翔太は、ぽろぽろと粒の涙を零しながら、それでも元に歪な笑みを浮かべようとしていた。 私の顔を伺い、私をさせようとする、いつものあの笑顔。
「じゃあさ……次は、ゼロ点を取ったらいいのかな」
「翔太、何を……」
「僕、もっと悪い子になるよ。