みかん小説
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"レジ打ちの妻は恥ずかしい" 第2話

に、急にたい静寂が落ちる。

「……なに? 改まって」

私がダイニングチェアを引いて腰掛けると、翔平はビジネスバッグから通のい封筒を取りし、テーブルのを滑らせて私のに差しした。

真っな、郵便番号枠もない無の封筒。 表には、几帳面なパソコンのフォントで、私の名が印刷されていた。

「これ、見てみて」

「何これ? ハネムーンの類?」

私が笑いながら封筒のフラップをくと、からてきたのはつ折りにされた枚のA4用だった。 そこに印字されていた文字を読んだ瞬、私の指先がぴたりと止まった。

『退職届』

央に、黒々とした朝体でそうかれていた。

「……退職届?」

声がかすれた。 文面には、すでに私の所属する会社名と舗名、そして『の都(婚姻に伴う寿退社)により、今をもって退職いたします』という文言が、丁寧にレイアウトされて印刷されていた。付の欄だけが空欄になっており、その横に印鑑を押すための丸印がく引かれている。

「これ……どういうこと?」

私は顔をげ、目のに座る婚約者の顔を見つめた。 冗談だと言ってほしかった。結婚の悪ふざけか、何かのサプライズの具であってほしかった。

しかし、翔平の表は驚くほど真剣だった。眉をし寄せ、まるで仕事のクライアントに難しい条件を提示するの営業マンのような、静で隙のない目をしていた。

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「見ての通りだよ。にでもしてきてほしい」

「どうして? 私、仕事を辞めるなんて言も言ってないよ」

「母さんと相談したんだ」

翔平は何でもないことのように、あっさりとそう言った。

「母さんがわざわざ調べてくれたんだよ。専業主婦の税制のメリットとか、これからの俺のキャリアのこととか。の嫁が、いつまでも所のスーパーでレジ打ちなんてやってる必はないって」

の嫁。 その言葉が、の奥でチクりと刺さった。

「必がないって……私は正社員だし、社会保険もあるよ。で共働きした方が、将来子どもができたも貯ができるし、活に余裕ができるって、にも話しって決めたじゃない」

「あのはまだ、俺の昇が決まってなかっただろ」

翔平はし苛ちを滲ませて、腕を組んだ。

「先週言ったろ? 来から営業課のチーフになるんだよ。うちの会社で、歳でチーフになるのは歴代でもかなりい方なんだ。これから付きう相も変わる。デベロッパーの部とか、ハウスメーカーの役員とか、そういうクラスのたちと族ぐるみの付きいが増えるんだよ」

「……それが、私の仕事とどう関係あるの?」

翔平はくため息をついた。 まるで、物分かりの悪い子どもに言い聞かせるような、隠しきれない侮蔑の混ざったため息だった。

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「千、現実を見ろよ。これからうちの司や取引先のが挨拶に来ることもある。そのにさ、『奥様は何をされているんですか?』って聞かれて、俺が何て答えるとう? 『あ、妻はそこのスーパーでレジを打ってます』って言えって言うのか?」

の空気が、急激にえていくのが分かった。

私ので、カチリと何かがれる音がした。

「……レジを打つことの、何が恥ずかしいの?」

「恥ずかしいとかそういう次元の話をしてるんじゃない!」

翔平はテーブルにを乗りし、声をくした。

「世体の問題だよ。俺のを考えてくれって言ってるんだ。俺はこれから会社の板を背負って、億単位の商談をまとめる男になるんだぞ。それなのに、妻がエプロンして銭を数えてるなんて、周りからどう見られるか分かるか? 『計が苦しいのか』『あいつの稼ぎじゃ嫁をわせられないのか』って、ろ指を指されるのは俺なんだよ!」

喉の奥がカラカラに乾いていた。 目のにいる男が、本当に緒に笑いってきた翔平なのだろうか。

「私……ずっとスーパーで働いてきたよ。翔平と会ったも、付きっていたも、プロポーズされたも。あなたは度だって、私の仕事を嫌だなんて言わなかった」

私は震える声を抑えながら、必に彼の瞳を探した。

「『千が毎真面目に働いてる姿が好きだ』って言ってくれたよね? 私が遅番で疲れてる、駅まで迎えに来て『千は偉いよ、尊敬する』って言ってくれたよね? あれは……全部嘘だったの?」

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