"レジ打ちの妻は恥ずかしい" 第1話
夕方のスーパー「マルエイ」の品売りは、ので最も慌ただしい帯を迎えていた。
「いらっしゃいませ。ポイントカードはお持ちでしょうか」
私は械に、けれどできる限り角をげて挨拶を交わす。 ピッ、ピッ、と際よくバーコードを読み込ませ、い根や牛乳パックをカゴの底へ、傷みやすいイチゴやトマトをそのに素くえていく。 の裏には、ちっぱなしで何も耐えてきた鈍い痛みが張り付いていた。指先は段ボールの梱とアルコール消毒で常に乾燥し、親指の付け根にはさなひび割れができている。
けれど、私はこの仕事が嫌いではなかった。
惣菜コーナーに値引きシールが貼られるのを待つ学。 特売の卵を事そうにカゴに入れる、所の顔なじみのおばあちゃん。 「いつも際がいいわね、ありがとう」 そう声をかけてもらえるたびに、自分ので誠実に働いて、自分自の活を支えているという確かな応えがあった。
私はを卒業してから、この域密着型のスーパーで働いている。最初はレジ担当の契約社員だったが、からは売りの庫管理やシフト作成も任される正社員になった。取りは万円に届くかどうかというところだが、毎きっちり万円を貯し、奨学も昨のにすべて完済した。
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誰も傷つけず、誰にもろ指を指されることのない、私のささやかな誇りだった。
「千さん、お疲れ様。あとの締め作業はやっておくから、がっていいわよ。結婚式の準備で忙しいんでしょう?」
チーフの島田さんが、レジの横から優しく声をかけてくれた。
「ありがとうございます、島田さん。お言葉に甘えます」
タイムカードを押し、バックヤードでエプロンをす。 ロッカーの鏡に映った自分の顔はし疲れていたが、の薬指で控えめにるプラチナの指輪を見て、さく息をえた。
結婚式まで、あとちょうどか。 付きった翔平とのしい活が、もうすぐ始まろうとしていた。
翔平とは、共通の友のバーベキューでりった。 都内の堅宅設備メーカーで営業をしている翔平は、歳で、清潔のあるスーツがよく似う男性だった。社交で話題が豊富で、し見栄っ張りなところはあったけれど、いつも私をリードしてくれた。
『千のそういう、にがついているところが好きだよ』
付きい始めた頃、居酒でそう言って微笑んでくれた翔平の顔をいす。 派なブランド物にも興を示さず、自炊をして節約を楽しむ私のことを、彼は「自の彼女だ」と周りに紹介してくれていたはずだった。
スーパーをると、の夜がよく照った頬を撫でた。
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居として借りた駅先の面採の2LDKへ向かう取りは、仕事の疲れを忘れるくらい軽かった。
今夜は、結婚式の最終打ちわせをする約束になっている。 披宴の引き物の数、席次表の肩きの確認、そしてし予算オーバーになっていた装のランクをどうするか。 カバンのには、付箋がたくさん貼られたウエディングノートが入っていた。
「ただいま」
鍵をけてリビングに入ると、すでに帰宅していた翔平がソファにく腰掛け、缶ビールを片にテレビを眺めていた。テーブルのには、コンビニの唐揚げの空き箱と、脱ぎ捨てられたネクタイが無造作に置かれている。
「おかえり。遅かったな」
「ごめんね、し引き継ぎがあって。翔平、ご飯まだでしょう? 蔵庫にある豚肉で、姜焼きでも作ろうか」
「いや、いい。さっきコンビニで適当にったから」
翔平はテレビから線をかさずに言った。その声のトーンに、微かな違を覚える。いつもなら「腹減ったー」と蔵庫を漁りに来るはずなのに、どことなくよそよそしい。
「そう? じゃあ、お茶でも淹れるね。そのあと、席次表の確認だけしちゃおうか。式への最終提、までだから」
私がキッチンへ向かおうとしただった。
「千。ちょっとそこに座ってくれ」
翔平が缶ビールをテーブルに置き、テレビのリモコンを押して画面を消した。