"恩人弁護士の不可解な書類" 第5話
断る理由などなかった。
約束の所は、神保町の裏通りにあるさな居酒だった。 曜の夜ということもあり、内はサラリーマンたちの喧騒と焼き鳥の煙で満ちていた。
「真さん! よかった、元気そうで……本当に配したんですよ」
由里は席に着くなり、私のを握って涙ぐんだ。 私は佐伯との調が勝ちに終わったこと、ネットの画が消えたこと、そして今はコンビニで働きながら再就職を目指していることを、かいつまんで話した。 榎本弁護士のことも話した。どれほど誠実で、どれほど頼もしかったか、謝してもしきれないのだとを込めて語った。
「へえ……世のに、そんな素敵な弁護士さんがいるんですね。よかった、本当に」
由里はビールをみ、堵したように息をついた。 だが、その表はすぐにし曇り、声を潜めて私の元に顔を寄せた。
「でも、真さん。会社の方はね、今、めちゃくちゃなんですよ」
「会社が……? 藤堂専務が、何かあったの?」
私が問い返すと、由里は周囲を警戒するように見回してから、元のトートバッグをごそごそと探り始めた。
「真さんが辞めた、同じ総務に入った派遣の梨さんって女の子、覚えてます? ほら、真さんの任で入ってきた、しそうな代半ばの子」
「うん、顔わせのにしだけ挨拶したけれど……あの子がどうしたの?」
広告
「あの、藤堂専務のパワハラがさらにエスカレートしたんです。梨さん、専務から架空の取引先への支払伝票の処理を無理やりやらされそうになって。それを拒否したら、社内で完全無されて、ミスを全部押し付けられて……先、眠薬を量にんで救急で運ばれたんです」
「えっ……!?」
私は息を呑んだ。 背筋に、嫌な気がる。
「命は取り留めたんですけど、会社側は『本の個なメンタルヘルス調による休職』で片付けようとしたんです。それで、梨さんのご族が激して……先週、会社と藤堂専務個を相取って、違法解雇と損害賠償を求める労働審判を京裁に申してたんですよ」
由里はバッグから、クリアファイルに挟まれた数枚の類のコピーを取りした。
「これ、総務のゴミ箱に捨ててあったのを、わず拾っちゃって。会社側が答弁を作るために、裁から送られてきた申と証拠説を役員たちで回覧してたんですよ。藤堂専務、真っ青な顔してシュレッダーかけろって鳴り散らしてましたけど」
「そんなの、私に見せて丈夫なの……?」
「いいんです。真さんにはる権利があるっていうか……あの会社がどれだけ腐ってるか、見届けてほしいんです」
由里に促され、私は油の染みた居酒のテーブルので、その類の束をいた。
広告
表には、縦きの朝体で厳めしく記されていた。
『申事件:令(労)第〇〇〇〇号 位確認等申事件』 『申:梨 郁恵』 『相方:株式会社〇〇商事、および藤堂 康則』
梨さんの痛な叫びが、法な用語に置き換えられて並んでいた。 藤堂専務がいかにして常に部を恫し、正な経理処理に加担させようとしていたか。 抵抗した梨さんをどのように孤させ、精神に追い詰めていったか。 胸が痛くなるような々しい記述が続く。 私が経験したことと、まったく同じだった。 藤堂のは、巧妙で、悪質で、逃げを塞ぐものだった。
私はページをめくり、添付された『準備面』とかれた証拠説の項目に目を移した。 原告側が、藤堂専務の常習な違法為を証するために提した、内部告発な陳述の抜粋が並んでいる。
そのだった。
第ページの、第項。 『相方・藤堂の常態化した隠蔽およびのについて』と題された段落の末尾に、私の目が釘付けになった。
そこには、太字でこう引用されていた。
『相方・藤堂は、部が正な支の指示に難を示した際、常套句として「印鑑はあんたがで押したんだ。察して自分から引け」と脅迫し、責任を部個に転嫁して自発退職をすることが常態化していた(別陳述記録参照)。
』
界が、ぐらりと揺れた。
居酒の喧騒が、潮が引くようにのいていく。