"恩人弁護士の不可解な書類" 第3話
これなら戦えます」
それから、榎本は私の話を言も聞き漏らさずにメモを取り続けた。 事件当の状況だけではない。 画が拡散されたの会社の対応、解雇に至る経緯についても、彼は細かく尋ねてきた。
「会社側は、あなたの弁を全く聞かなかったのですか」
「はい。特に常務の藤堂というが……最初から私を辞めさせたい実を探していたみたいで」
私は、胸の奥に閉じ込めていた記憶を吐きした。
「藤堂専務は、以から経理の正規ルートを通さない備品発注を繰り返していました。私、総務の雑用で、専務の机にある備品管理の専用印鑑を預かることがあったんです。ある、専務から『ここに判を押しておけ』と、にい伝票を渡されて……怖くて躊躇していたら、すごく睨まれて」
榎本のペンのきが、わずかに止まった。 彼は顔をげ、私を見つめた。
「それで、どうしたのですか」
「押しませんでした。そうしたら、専務が自分で引きしから別の印鑑をして押して……そのに、言われたんです」
私の脳裏に、藤堂のく湿った声が蘇った。
「『印鑑はあんたがで押したんだ。察して自分から引け』って。私、押してないのに、まるで私が勝にやったみたいに記録を改ざんされて……。今回のの件も、その延なんです。あのは、私が会社の秘密をっているとって、追いすために画を利用したんです」
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吐きすと、涙が止まらなくなっていた。 けなくて、悔しくて、体が刻みに震えた。 榎本は静かにティッシュの箱を差しし、私が落ち着くまで何も言わずに待ってくれた。 そして、類の端に何かを素くき留めると、い調で言った。
「矢野さん。今ここで私たちが向きうべき敵は、まずその画の投稿者です。あなたの尊厳を奪ったを、のに引きずりす。会社の汚いやりに、あなたがこれ以傷つく筋いはありません。全部、私に任せてください」
その言葉は、暗の底で凍えていた私のに、確かなとなって染み渡っていった。 このなら信じられる。 このだけが、私の方だ。 私はそう確信していた。
榎本のきは、驚くほど迅速だった。 翌には裁判所へ発信者報示の仮処分を申して、プロバイダを特定。 投稿者のIPアドレスから割りされたのは、都内のIT企業に勤める佐伯という代半の男だった。 佐伯は「炎系まとめサイト」の管理で、閲覧数を稼いで広告収入を得るために、常に内やでの盗撮画を悪質に編集してばら撒いていた常習犯だった。
榎本は、佐伯に対して慰謝料請求の民事調を申してた。 逃げ得を許さないよう、佐伯の自宅と勤務先に内容証郵便を送りつけ、逃げを完全に塞いだでの続きだった。
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調期は、霞が関の京簡易裁判所でかれた。
調のい扉をけると、そこには怯えた表の柄な男が座っていた。 物のスーツを着て、終始落ち着きなく貧乏ゆすりをしている。 それが、画面の向こうから私のを々に踏みにじった張本、佐伯だった。 佐伯の隣には、弁護士会から割り当てられたのであろう、やる気のなさそうな国選の代理が座っていた。
「……あれは、単なる常の景を記録しただけで、特定の個を攻撃する図はありませんでした」
佐伯の代理が、あらかじめ用された答弁を棒読みした。
「ネットで拡散されたのは第者の仕業であり、申の社会評価がしたとしても、相方に直接の責任を問うのは法に無理があります」
調委員のが、困惑したように顔を見わせた。 ネットのトラブルには慣れなのか、「まあ、お互いに譲歩して、画の削除だけでを打ってはどうか」という空気が流れ始めた。
私の臓が、で鐘を打つ。 やっぱり、これでおしまいなのだろうか。謝罪も、賠償もなく、ただ画が消えるだけで、私の失われた活は戻らないのだろうか。
その、私の隣に座っていた榎本が、静かにちがった。
「調委員の先方、こちらをご覧ください」
榎本は、持参したノートパソコンをき、画面を調委員と佐伯に向けた。