みかん小説
本棚

"中卒の清掃員をクビにした翌日" 第5話

「はい」

「なぜ?」

「え?」

「例えば、誰も見ていない倉庫の

「誰も褒めない

「そういう所でも、君は同じように丁寧にやるのか?」

は当たりのように答えた。

「もちろんです」

「どうして?」

し笑った。

「だって、そこを使うがいるからです」

は黙った。

「お客様が見る所だけ綺麗にしてもがないとうんです」

「見えない所がちゃんとしているから、見える所も綺麗になるんじゃないでしょうか」

その言葉に、はゆっくり頷いた。

「……君は、本当にそうっているんだね」

「はい」

迷いのない返事だった。

そのの夕方。

は誰もいない廊でスマートフォンを取りした。

画面には、の秘から届いたメッセージ。

【調査資料を確認しました】

【杉マネージャーについても追加調査です】

は返信した。

【続けてくれ】

【ただし、川さんについては本に気づかれないように】

送信。

そしてスマートフォンをしまった。

郎。

彼には、この百貨に来た理由があった。

単なる清掃員体験ではない。

から見える景だけでは分からないものを見るため。

の声を聞くため。

社員たちが本当に何を考えて働いているのかるため。

そしてもうつ。

次の代を任せられるを探すためだった。

だが、はまだ確信していなかった。

が本当にその物なのか。

広告

だからこそ、彼は見続けていた。

誰もいない所で。

誰にも評価されない仕事をする姿を。

誰かに優しく声をかける姿を。

尽な言葉を受けても、まない姿を。

事件が起きる。

11

1階化粧品売り

が清掃をしているところへ、杉が現れた。

にはタブレット。

はいつものようにたかった。

川さん」

「はい」

し話があります」

を止めた。

は画面を見せる。

そこには、結記録が並んでいた。

【顧客対応 5回】

【作業超過】

【担当

は淡々と言った。

「あなたは何度注しても改善しませんね」

の顔からし血の気が引いた。

「でも、お客様が困っていて……」

「またその話ですか」

はため息をついた。

川さん」

「あなたは勘違いしています」

「優しさと、勝は違います」

その言葉に、結は黙った。

はさらに続けた。

「来週から配置を変更します」

「え?」

「売り清掃かられてください」

「バックヤード担当になります」

は驚いた。

「バックヤード……」

「倉庫、、従業員トイレ」

たく言った。

目につかない所です」

その瞬

れた所にいたが、静かに顔をげた。

そして初めて。

の穏やかな表ではなく。

経営者としての鋭い目を見せた。

「……なるほど」

さく呟いた。

この、まだ誰もらなかった。

広告

この配置転換が。

の運命を変えるきっかけになることを。

 

「売り清掃かられてください」

亮介の言葉は、結の胸に静かに沈んでいった。

鳴られたわけではない。

責められたわけでもない。

だからこそ、そのたさが余計に苦しかった。

「……分かりました」

さくげた。

本当は聞きたかった。

なぜですか、と。

5、毎欠かさず働いてきたことは見てくれていなかったのですか、と。

でも、言葉にはしなかった。

言ってもがないとったからだ。

はそんな結の様子を見ることもなく、タブレットを操作していた。

「来週からしい担当表を渡します」

「はい」

「それと、余計な顧客対応は今切禁止してください」

「……はい」

「分かりましたね?」

「分かりました」

が答えると、杉は満したように頷いた。

そして、そのままっていった。

はしばらくそのち尽くしていた。

に持った清掃用クロス。

いつもなら自然にくはずのが止まっている。

「私は……違っていたのかな」

さく呟いた。

その声を聞いていたがいた。

だった。

れた所で、静かに2のやり取りを見ていた。

***

そのの昼休み。

従業員堂。

いつものように結さな弁当箱をいた。

しかし、いつもと違って箸がまなかった。

は向かいに座りながら、そんな結を見ていた。

川さん」

「はい」

「辛くないのかい?」

し驚いた顔をした。

「何がですか?」

「今のことだよ」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: