みかん小説
本棚

"中卒の清掃員をクビにした翌日" 第2話

そう信じていた。

その数

は昭栄百貨の清掃スタッフ募集を見つけた。

1100円。

契約社員。

学歴問。

その文字を見て応募した。

面接で聞かれた。

は?」

退しました」

「理由は?」

は正直に答えた。

「母を支えるためです」

面接官はし驚いた顔をした。

そして言った。

「……分かりました。頑張ってください」

それが結と昭栄百貨の始まりだった。

5

も無断欠勤したことがなかった。

遅刻もない。

文句も言わない。

体調が悪いでも、笑顔で勤した。

しかし、契約社員というは変わらなかった。

料はほとんどがらない。

ボーナスもない。

正社員との待遇差はきかった。

それでも結満を言わなかった。

「仕事があるだけありがたい」

いつもそうっていた。

8

準備が始まる。

正社員スタッフたちが勤してくる。

「おはようございます」

は必ず挨拶をした。

しかし返ってくる反応は様々だった。

「……おはよう」

さな声。

あるいは無言。

まるでそこにいないかのように通り過ぎるもいた。

それでも結は気にしなかった。

「忙しいんだろうな」

そうっていた。

あるの休憩

が入った瞬、数の販売員の会話が聞こえた。

「最入った、仕事できる?」

「まあ普通じゃない?」

「でも清掃の子って本当に毎いるよね」

川さん?」

広告

「あの子、いつも笑ってるけど疲れないのかな」

「さあ。清掃なんて誰でもできる仕事だし」

さな笑い声。

瞬止まった。

胸の奥がし痛んだ。

でも、すぐにロッカーをけた。

える。

髪をまとめる。

そしていつものように笑った。

「今も頑張ろう」

誰にも聞こえない声で、自分に言い聞かせた。

そのも結らなかった。

自分を「誰でもできる仕事をしている」と見ているたちがいる方で、

その仕事ぶりを、誰よりも真剣に見ている物がづいていることを。

そして、その物との会いが――

止まっていた結を、再びかし始めることになる。

 

昭栄百貨で働き始めて5

川結は、いつのにか「そこにいることが当たり」のになっていた。

しかし、それは決して良いではなかった。

誰も彼女を気に留めない。

誰も彼女の努力を見ようとしない。

だけ呼ばれる。

そして、終われば忘れられる。

それが契約社員というなのだと、結はいつしか理解していた。

10

から2が経過した昭栄百貨1階。

級ブランドのり。

お客様たちの楽しそうな会話。

員たちのるい声。

華やかな売りで、結は静かにカートを押して歩いていた。

にはさな布。

もう度、ガラスケースを確認する。

広告

「ここ……し曇ってる」

ち止まった。

誰も気づかないほどさな汚れ。

しかし、結には分かった。

触れている所だからこそ、分かる違いだった。

布で優しく拭く。

角度を変えて確認する。

が当たったに、曇りが残らないかを見る。

「これで丈夫」

さく笑った。

その姿を、通り過ぎる販売員が見ていた。

しかし、声をかけることはなかった。

川さん、まだそこやってるの?」

突然、背から声がした。

振り返ると、化粧品売りの女性スタッフだった。

は田美咲。

正社員として7勤務している。

より齢はだった。

「はい。もうしで終わります」

「もうしって……そこ、誰も見ないでしょう?」

美咲は呆れたように笑った。

「効率悪いよ。清掃って決められたで終わらせるものじゃないの?」

し困ったように笑った。

「でも、お客様がくで商品をご覧になる所なので……」

「真面目だね」

美咲はそう言った。

しかし、その声には褒める気持ちはなかった。

「まあ、契約社員さんはがあるからいいよね」

その言葉に、結が止まった。

瞬だけ胸が痛む。

でも、何も言わなかった。

「失礼します」

そう言って、別の所へ移した。

と争うことが苦だった。

誰かを責めることも嫌いだった。

母からずっと言われてきた。

を傷つける言葉は、自分にも返ってくるからね」

だから、どんなに嫌なことを言われてもした。

ただ、それが正しいとっていた。

しかし、そんな結にも唯の楽しみがあった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: