"中卒の清掃員をクビにした翌日" 第1話
「から来なくていいです」
その言葉を聞いた瞬、私はのが真っになった。
目のに座る男性は、まるで気の話でもするような表だった。
りも、迷いも、申し訳なさもない。
ただ、処理すべき類を読みげるだけのようなたい声。
「川さん。あなたは契約社員です。正直に言いますが、卒の契約社員なんて、いくらでも替えはいるんですよ」
胸の奥に、鋭い何かが突き刺さった。
5。
のも、のも。
誰よりく勤して、誰より丁寧にを磨いてきた。
お客様が気持ちよく買い物できるように。
従業員が気持ちよく働けるように。
ただ、それだけを考えて働いてきた。
なのに、たった数分の面談で、私の5は簡単に切り捨てられた。
「……分かりました」
私はそう答えた。
本当は聞きたかった。
なぜですか、と。
何が悪かったんですか、と。
でも、言葉がなかった。
母の顔がに浮かんだからだ。
病院から帰る途、いつもし疲れた笑顔で言う母。
「結のおかげで助かってるよ」
「無理しなくていいんだよ」
そう言いながら、誰より私のことを配してくれる母。
その母の薬代。
病院代。
活費。
全部、私の料で支えている。
もしから収入がなくなったら……。
私は体どうすればいいのだろう。
そんなが気に押し寄せてきた。
しかし、そのの私はらなかった。
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この、私を切り捨てたよりも先に、私の働く姿をずっと見ていたがいたことを。
そして、その老との会いが、私のをきく変えることになることを。
***
京都。
創業120以の歴史を持つ老舗百貨――昭栄百貨。
昔からくのにされてきた所だった。
級ブランドの舗が並ぶ1階フロア。
季節ごとに変わる美しい装飾。
丁寧な接客。
格式ある雰囲気。
方から京へ来たが、必ず度は訪れたいとうような所。
その華やかな空の裏側で、毎朝誰よりく働く女性がいた。
川結。
22歳。
契約社員。
担当は館内清掃。
午5。
まだ空が暗い。
百貨の正面玄関には、まだの姿はない。
警備員が巡回する音だけが静かな館内に響いている。
そんな、結は1でモップをかしていた。
「よし……今も綺麗にしよう」
さく呟きながら、を磨く。
入のガラス扉。
理の。
ショーケースの周辺。
垢が残りやすい所。
お客様が気づかないようなさな汚れまで、結は見逃さなかった。
「ここを通るが、気持ちいいとってくれたらいいな」
それが結の仕事への考え方だった。
誰かに褒められるためではない。
評価されるためでもない。
ただ、自分が担当した所くらいは、自分の力できれいにしたかった。
結がこの百貨で働き始めたのは、17歳のだった。
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本当なら、活を楽しんでいる齢だった。
友達と放課に寄りをして。
文化祭の準備をして。
将来のを語りって。
そんな普通の毎を送るはずだった。
しかし、結の庭には余裕がなかった。
父親はいなかった。
幼い頃に婚し、それ以来、母と2で暮らしてきた。
母は朝から夜まで働き、結を育ててくれた。
古いアパート。
狭い部。
決して裕福ではない活。
それでも母はいつも笑っていた。
「結、勉だけは頑張りなさい」
「お母さんみたいに苦労しなくていいからね」
そう言って、疲れた体で夕飯を作ってくれた。
結も勉は嫌いではなかった。
特に国語が好きだった。
文章を読むこと。
の気持ちを像すること。
それが楽しかった。
しかし、2の。
母が倒れた。
病院で告げられたのは、期な治療が必だという現実だった。
「入院費……どうしよう」
母が病で泣いた。
その姿を見た瞬、結は決めた。
学を辞める。
働く。
母を支える。
担任教師は何度も止めた。
「川さん、本当に辞めるの?」
「まだ若いんだから」
「通信制という方法もある」
でも結は首を横に振った。
「母をにできません」
17歳の女には、それしか考えられなかった。
退学届を提した。
教をる、最に自分の机を見た。
机のには、まだ教科が残っていた。
友達から借りたノート。
きかけの作文。
全部、そのまま置いてきた。
「またいつか……」
そうった。
いつか勉をやり直せるが来る。