"七歳の女の子が握りしめた富士山の木札" 第16話
役所のか、保険の勧誘か。若林さんはしれたところでの濡れた髪を拭いていた。あの会話は聞こえていなかったはずだ。
に片付けが終わって3でに戻った。蔵庫から牛乳を3本す。は腰にを当てて息に半分んだ。
「うちのお湯がを涼しくした」
「みんなが巻いたのよ」
「でもお湯はうちの」
「そうだな」
は満そうに残りをみ干した。
「来もやる」
「内か?」
「うん。来はきのがいい。きくなったらな」
「来はもっときくなってるもん」
「そうか」
その夜、俺は番台で帳面をいた。朝の内に来たが、そのまま夕方の湯に入っていった。今の数字は久しぶりに良かった。今はいいだった。商のたちに若林さんたちが馴染んでいた。が内に使った湯を、自分のうちの湯だと言った。それい返しているうちに、俺は自分のにあるものに気づいた。
この暮らしがいつまでも続くのか。いつまでも続けばいいと俺はっている。がりないからではない。あの2にここにいてほしいと俺はっている。だが若林さんがやめない保証はない。がもうしきくなれば、体の調子が戻れば、若林さんはもっといい勤め先を探すだろう。それが当たりだ。
当たりのことを俺は嫌がっている。35になって初めて、俺は自分ののを認めた。
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認めただけでにす気はまだなかった。
7の半ばの夕方だった。俺がのれんをしにへると、通りの向こうに黒いスーツの男がっていた。この暑さに着を着たままだ。60くらいだろうか。背筋が真っすぐで、靴の先まで綺麗に磨いてある。この町では見ないなりだ。
に迷ってるのかといながら俺は声をかけた。その、のからがてきた。
「おじさん、準備できたよ」
すると男のきが止まった。こっちを見ているのか、そこからかなくなる。突然、男はを渡ってきた。のまで来て、それから膝を折った。面に片膝をついて、の位置をよりくした。
「お嬢様……」
声が震えていた。「見つけました」
俺もも何のことか分からず、男の言葉に驚いた。は俺の方を見た。それから男を見た。
「お嬢様って誰のこと?」
「申し訳ありません。あなたのお母様です。お嬢様の幼い頃のお顔にそっくりです」
「お母さん……」
が呟くと同に、のれんの内側で音がした。若林さんがてきて、そのまま止まった。若林さんのから付が落ちた。顔からが引いていくのが、夕方ののでもはっきり分かった。
男はちがってく腰を折った。
「今井、お嬢様、ごぶ汰しております。今井でございます。どうしてここが……」
若林さんはを自分のろに隠した。
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「40、材を運ぶトラックの運転を務めさせていただき、旦様には世話になりました。定で会社をれましてから、旦様に個にお願いされお嬢様を探しておりました」
「父が……はい」
「休みのに町を区ずつ歩いてまいりました。柳坂の商はその最の区でございます」
俺は先の会話をいした。母親と娘の2暮らしを探している男が来たと魚と言っていた。あれはこののことだ。
「宮様でいらっしゃいますか?」
「なんで俺のことを?」
「申し訳ありません。お嬢様に関する方でしたのでし調べさせていただきました。お嬢様がお世話になっております」
俺は返事をしなかった。何をどう返せばいいのか分からなかった。若林さんがお嬢様という話は1度も聞いていない。こののぶりからすると、実は材を扱う古い会社のようだ。
「今井さん、私は帰りません。拒否しております。父にってください。ここには誰もいなかったと」
「それは来かねます」
「なぜですか?」
「私は旦様にお返事を差しげるお約束で参りました」
「10です。あの私の話を聞いてもくれなかった。今更何を伝えるんですか?」
「だからこそお伝えしなければなりません」
今井さんは鞄からい封筒をした。隙は1つない封筒だ。
「旦様からのおでございます。
お読みにななくても結構とのことです。お渡しするのが私の役目でございますので」