"七歳の女の子が握りしめた富士山の木札" 第13話
「宮さん、私、1度だけ役所にったことがあるんです」
「役所ですか?」
「活保護の窓です。のにの着がさくなったのを見て、これはもう無理だとって……」
たわしの音が続いている。俺もを止めなかった。
「番号を待って、係りの方に用を貰いました。名もきました。 までいたんです」
「それで?」
「途で説があって、『申し込むとご族に確認の面がくがあります』と言われました」
そこで若林さんは1度だけを止めた。
「私、ちがってそのまま用を置いて帰ったんです」
「ご族にられるのがまずいんですか?」
「実とは10切れています。親の決めた縁談を断って荷物1つでました。それからは1度も連絡していません」
「実はいんですか?」
「でける距です。それが怖いんです。ければこんなに気にしません。向こうから来たこと、1度だけあります」
若林さんの声のさが変わった。
「6です。が1歳になった頃に、当の所を突き止めてきました。父の弟です」
「おじさんですか?」
「はい。両親は私に会いたくもなかったんでしょうね。でも叔父も玄関先でを見て言いました。『その子は都が使えそうだ。だが、親はいらない』」
のが引いていく音だけがした。
「法律のことはしは調べました。無理に連れてかれることはないといてありました。
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それでもあのの声が体に残ってるんです。うちの所でその声を聞くくらいなら、今のままの方がまだマシだとったんです」
俺はをきかけた。戸籍の話ならしに聞いた覚えがある。どうしても嫌だとく言えば、族への確認を省いてもらえるがあるらしい。窓によって扱いが違うとも聞いた。
言おうとしてやめた。今言えば、このは自分を責める。あのもっと粘っていればよかったと、何度もうかもしれない。このはもう分自分を責めている。窓のが悪いのではない。規則が悪いのでもない。ただこのはあの、子からちがってしまった。く詳細をらなかった。それだけのことがこの1を決めた。
俺はたわしを持ち直して、をこすった。
「そうだったんですね。すみません、こんな話を……」
「いえ、宮さんはく聞いてこない方ですね」
「聞くのがなだけです」
「そんなことはありません。うちの客は俺が黙ってるから勝に話すんです。番台は聞き役の席なので」
「私もその席に座っています。じゃあこれからは若林さんが聞く側ですね」
「困りました。私も聞くのはです」
「じゃあうちの番台は聞きが2になりますね」
「それでもお客さんは話していきますよ。勝に話すばかりですから。うちの番台は座ってるだけで話が集まる所なんですよ。
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じいさんの代からそうでした」
若林さんがさく笑った。俺は排溝の方へを送りながら言葉を選んだ。
「でも、もっとく聞けばよかったと今はってます」
「私が言わなかったんです」
若林さんはそう言うと、そのままを磨き続けた。2分のたわしの音がしばらく浴に響いていた。
4になった。若林さんは朝の掃除から閉まで、1って過ごせるようになっていた。腰の具を見ながら休むところは休む。休み方を覚えたと本は言う。
タオルの畳み方はににくなった。4の半ばには、俺が10枚畳むに15枚畳むようになっていた。
「いな」
「もう1回やりましょう」
「何度やっても同じですよ」
「今度は端から取ります。はい、どうぞ」
俺はいつのにか若林さんのスピードに追いつけなくなっていた。々タオル畳みの速さを競っている。今は数えたら12枚と18枚だった。が番台の子のでをバタつかせて笑っていた。
牛乳の庫を数える役もから若林さんに移っていた。番台を任せられる分、俺は釜と掃除に回れる。今ではが届かなかった配管の裏まで定期に洗えるようになった。若林さんが来てくれるようになってから、女湯が綺麗になったという話も客の方から広がった。慣れた付きで若林さんは鏡も蛇も磨きげる。
常連の女性が所のを連れてくるようになって、番台の数字がしずつを向いた。