"3000万円と捨てられた母の罠" 第5話
「はい、はい。ご配なく、順通りにめますので」 話が切れた。
はる子は席をった。の力が抜けそうでしたが、こらえました。はる子は部に戻った。ペン型録音を再び取りした。これをどこに隠そうか。
クローゼットをけ、着るを選んだ。黒いズボン、グレーのセーター、そして着。はる子は着の内側を確認した。さなポケットが付いています。そこにペンを入れれば見つからないかもしれません。あるいは、ズボンの縫い目に隠すというもあります。
はる子は針と糸を取りした。ズボンの内側の縫い目をほどき、さなポケットを作り始めた。針、針。丁寧に縫いめます。は震えていましたが正確でした。ペンがすっぽり入るだけの空ができました。ペンを入れてみるとぴったりでした。から見ただけでは全くわかりません。
夕のことでした。はる子が廊を歩いていると、ろから声をかけられた。 「おばあちゃん」 振り返ると、泉さんだった。50代くらいに見える活指導員です。彼女は穏やかな表でづいてきました。 「ここに慣れるのは変でしょう」 はる子は目を伏せた。答えたくありませんでした。しかし、泉さんはせかしませんでした。待ってくれたのです。 「はい……」 はる子の声はさかった。泉さんの表が揺れた。
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同がよぎりました。それは偽りではありませんでした。からの表でした。 「最初は皆さんそうですよ。丈夫、きっと慣れますから」 泉さんははる子の肩を軽く叩いた。そして静かにっていった。
はる子はその背を見送った。胸の片隅が温かくなった。あのは違うかもしれない。私の方になってくれるかもしれない。
はる子は部に戻った。ベッドに座り、着るを再度確認した。ズボンの縫い目の内側、ペン型録音が隠されている所を触った。 窓のは暗に包まれていました。、病院へきます。そこでどんな会話が交わされるか分かりません。しかし、はる子には準備ができていました。はる子は静かにつぶやいた。 ——「私がすべきことは1つ、聞いて残すこと」
ペン型録音はのひらに収まるほどさいものでした。さく軽いペンですが、今やそれが最の武器でした。
はる子はベッドに横になりましたが、眠れませんでした。井を見つめながら考えを巡らせます。病院へ、認症の検査を受けるのだ……。
はる子は目を閉じ、過を振り返り始めた。1ヶからおかしなことが続いていました。嫁のさやかはしきりに健康診断をめてきました。息子の健は通帳の管理をしたがりました。最物忘れが激しくなっていませんか、という言葉も頻繁ににしました。
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当はただ配してくれているだけだとっていました。しかし今えば、そうではありませんでした。全てが図だったのです。
はる子がはっきりと覚えていることは2つありました。
1つ目は薬のことです。2週ほどのことでした。さやか薬を持ってきました。 「お母さん、栄養剤ですよ。を守ってんでくださいね」 はる子は薬を見た。見たことのない薬でした。 「これは何?」 「ビタミン剤です。記憶力に良いそうですよ」 さやかは薬とをはる子のに置いた。せかすように。 「今んでください」 さやかの顔が変った。優しかった調が消え、命令調になっていました。 「を守らないと効果がないんです。さあ、んでください」 はる子は薬をに取りました。しかし、何か腑に落ちませんでした。には入れましたが、み込みませんでした。をむふりをして舌のに隠したのです。 「ちゃんとみましたね」 「ええ」 はる子は頷いた。さやかは空のコップを持って満そうに微笑んだ。 トイレへき、薬を吐きした。い錠剤でした。はる子はそれをティッシュに包み、ゴミ箱の奥くに捨てた。その夜、はる子は考えました。なぜわざわざを守ってむと言うのだろう。なぜ今すぐむとせかすのだろうとでした。
2つ目はそのの夜のことでした。
はる子がをみに台所へくと、リビングの気がついていました。午1頃のことです。