みかん小説
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"婚姻届の帰り道、残高は1億円だった" 第16話

鷲尾の顔から笑みが消えた。鷲尾が慌ててこうとした。 「しかしそれは、その証としてどこまで信用できるか――」 「国の認定を受けた第関のものです。疑うならどうぞそちらでもお調べください」

孝介さんの静かな返しに、鷲尾はの句が告げれなくなった。けれど、孝介さんの本当の撃はそこからだった。 「ついでに申しげておきます」 彼は静ytically続けた。 「私がこので仕込んだ酒は、『現』の名で世にています。そして先、パリで落札されたあの『現』も、全てこの汚染されているとされるで私が作ったものです」

が止まった。会線が孝介さんに集した。『現』――世界が探し求めていたの酒の作りが、今目のにいる。潰れかけとわれていたこのの酒蔵の男が……。

3つの真実がたった1つの発言で同らかになった。デマが事実無根であること。『現』の作りの正体。そして瀬の蔵が世界に認められた本物であるということ。

の空気が変した。さっきまで私たちにたい線を送っていた々が、今は畏敬のまなざしで孝介さんを見つめている。記者たちがどよめきち、フラッシュがまたたいた。会にいた髪の老蔵元が、嘆したようにいた。 「瀬さん、あんたのくなったお父した頑固者だったが……その頑固者の血がこんな傑物を育てておったとはなあ!」

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その言葉に、会からわずして拍が湧き起こった。そして壇の鷲尾は、言も発することができなかった。ただ青ざめた顔でち尽くすばかりだった。

の隅で成りきを見守っていた玲子も同じだった。凍りついたようにけずにいる。私は2がぶざまに取り乱す姿を見たいとはわなかった。ただ彼らに向けられていた周囲の線が潮が引くようにれていく。それだけで分だった。

孝介さんは勝ち誇ることも、鷲尾を糾弾することもしなかった。ただマイクので静かにこう述べた。 「いい酒はを偽りません。ごまかせば必ずる。それだけのことです」 そして礼し、彼は静かに壇をりた。その背が私にはどんな照よりもきく気く見えた。

談がある。品評会のいざこざはきく報された。『現』の作り奥の才杜氏だったこと、汚染のデマは跡形もなく消えり、蔵には以にも増して注文が殺到した。蔵では井さんたちが活気を取り戻していた。増えた注文に答えるため、若い職たちもしく雇った。静まり返っていたあの蔵に、再びの声と米を蒸すい蒸気が満ちていく。

方で、デマの所が鷲尾だったという噂は業界に静かに広まっていった。信用を失った鷲尾の元からは取引先が1つ、また1つとれていったという。

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玲子の会社もいつのにかのれんをろしていた。無理な借の丈にわぬ野の果てだった。私はその凋落を「ざまあみろ」とはわなかった。ただ静かに事実として受け止めた。

そしてある、あの篠田健太ふたたび蔵を訪れた。今度は司らしき物を伴って。 「み咲、先変失礼をいたしました……」 かつて私を見し、孝介さんをしがないと嘲笑したあの男が、今はぶかとげていた。 「が社とお取引を……いや、虹様の湧を担当させていただければと……」 のひらを返したような態度だった。それでも私はみもあざけりもじなかった。ただい過だとった。孝介さんはその申しを丁寧に断った。

全てが終わった、私は孝介さんのきなをそっと握った。胸に込みげてきたのは、スカッとした爽ではなかった。10、このはたった1であのない世界と戦い続けてきた。誰にも正体をかさず、ただいい酒を作るというそので。今のこの静かな勝利は、10の孤独と誠実さがもたらしたものだった。

「お疲れ様。本当に、1でよく頑張りましたね」 私がそうささやくと、孝介さんはしだけ驚いたように私を見た。そしてその引き締まった顔が急にくしゃっと歪んだ。私のを握り返すそのきなの力が、しだけくなった。

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