"昭和31年、給料日に消える父の秘密" 第5話
正はそんな族を見て、
「だから言いたくなかったんだ」
と満そうに言った。
母は噌汁をよそいながら、
「これが緒に暮らすってことでしょう」
と返した。
「子どもにまでさせて」
「あなた1にさせるよりいいわ」
「よくない」
「じゃあ、誰がするのが正解なの?」
父は答えられなかった。
4の料は、会社からほぼ満額がた。
正は7に帰った。
「今はいね」
浩司が嬉しそうに言った。
正は料袋を母へ渡した。
「ほとんどた」
文子はそので数えた。
しだけりなかった。
「これだけ?」
「うん」
「何か売った?」
父は顔をしかめた。
「売ってないよ」
「本当に?」
「疑うなら体検査でもするか」
母はし笑った。
「じゃあ今はこれでやりましょう」
父は複雑な顔をしていた。
料がないままへ持ち帰る。
それだけのことが、彼にはかなり苦しかったらしい。
そして5。
会社から支されたのは、普段の半分ほどだった。
の休憩所で茶い封筒を受け取った、誰もすぐこうとしなかった。
社がへった。
まだ40代の男だったが、この半で急に老けたように見えた。
「すまない」
くをげる。
「来には何とかする」
誰も返事をしなかった。
「材料への支払いを止めれば仕事そのものができなくなる。今だけは勘弁してくれ」
端の方で誰かが言った。
「先も聞いたよ」
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社は顔をげなかった。
同僚の宅が封筒をいた。
「半分だ」
「うちも」
「これじゃ賃払えねえよ」
満が広がった。
「もう辞める」
若い員が言った。
しかし隣の男が笑った。
「辞めてどこくんだよ」
転職先が簡単に見つかるわけではない。
特に族を抱えた男たちは、すぐにはけなかった。
正も封筒を懐へ入れた。
帰り。
福田古物のでが止まった。
ガラス越しに、自分が売った物がいくつか見える。
万はもうなかった。
誰かが買ったのだろう。
に売れそうな物は、ほとんど残っていない。
その、正のへ具箱が浮かんだ。
に帰る。
文子は夕の支度をしていた。
「お帰り」
「うん」
正は押し入れをけた。
具箱をす。
呂敷を広げた。
文子が振り返った。
「何してるの」
「ちょっとな」
「売るの?」
正は答えなかった。
「約束したでしょう」
「今は半分だ」
母のが止まった。
正は具箱へを置いた。
「これならしになる」
「だめ」
「文子」
「売らないで」
「飯がえないぞ」
母はしばらく父を見ていた。
それから台所へき、米櫃の蓋をけた。
底の方から、さな布袋を取りす。
ちゃぶ台のへ逆さにした。
円玉。
円玉。
百円札。
さながばらばらと広がった。
正は驚いた。
「何だ、これ」
「貯めてたの」
「いつから」
「ずっと」
「何のために」
「何かあったのため」
父の顔が険しくなった。
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「これは使うな」
「どうして?」
「病気したらどうする」
「今が“何かあった”でしょう」
正は黙った。
そのやり取りを見ていた恵美は、自分の部へった。
机の奥から菓子缶を持ってくる。
には遣いが入っていた。
「私も」
正が眉をひそめた。
「馬鹿。子どものなんか」
「お父さんの計は売っていいのに?」
「それとこれは違う」
「何が違うの」
父は答えられなかった。
そこへ浩司まで現れた。
さな豚の貯箱を抱えている。
「僕もあるよ」
母が笑った。
「浩司、それいくら入ってるの?」
「分かんない」
振ると、ちゃりちゃりと軽い音がした。
割るのはもったいないと言って、底の栓をける。
てきたのは数円だった。
正はしばらくその貨を見つめていた。
そして、
ふっと笑った。
し笑い、
やがて顔を伏せた。
「俺は何やってるんだろうな」
文子が言った。
「父親してるんでしょう」
「こんなのがか」
「そうよ」
そしてしを置き、
「でも、父親だけで族はできないの」
と言った。
その。
具箱は売らなかった。
5の半。
川の卓から魚が減った。
肉はほとんどなくなった。
夕が芋と噌汁、漬物だけのもあった。
以なら母は、
「今はあまりお腹が空いてなくて」
と言って自分の分を子どもへ回していたかもしれない。
しかし今は言わなかった。
「今はないよ」
と先に言った。
父も、
「会社から半分しかなかったからな」
と答えた。
浩司が聞いた。
「来はいっぱい?」
父は苦笑した。
「分からん」
「じゃあずっと芋?」