"片親の分際で、100年早い" 第12話
その物が今、面接にを踏み入れた。
「失礼するよ」
穏やかな声が面接に響いた。教授陣が慌ててちがり、柴田護部も驚きで目を見いたまま姿勢を正した。しかし、戸塚だけはけなかった。子に座ったまま、まるで像のように固まっている。
「戸塚君、久しぶりだな。息子から話があったからね、来てくれと」
「息子……?」
その言葉が面接に響き渡った。戸塚の目がゆっくりと俺に向けられる。その目にはもはや先ほどまでの傲さは微もなかった。代わりにあるのは、状況を理解しようともがく混乱と、じわじわといがってくる恐怖だけ。
「息子? あぁ……藤川陽。祖母の姓を名乗っているが、戸籍は代陽だ。私の息子だよ」
父の言葉に、面接が凍りついた。
「祖母に育てられ、私と再したも『自分の力でいがりたいから』と、代の姓には戻さなかった。だから私も見守ることにしていた」
戸塚の顔面はロウのようにく変わり、額には油汗が浮かんでいた。先ほどまで俺を見ろし、履歴を燃やした男が、今、子ので凍りついている。
「ま、待ってください、委員、私は……」 「戸塚君。さっきの面接、私は別のモニターで見ていたよ」
父の線が鋭くる。
「履歴を燃やしたね。『片親の分際で』と言ったね。そして、『悔しかったら親を呼んでこい』と。
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だから陽は私を呼んだんだ」
父がゆっくりと戸塚にづいた。その音が静まり返った面接に響く。戸塚は言い訳をしようとをきかけたが、父の線を受けて言葉をみ込んだ。
「君が苦労していがってきたことはっている。片親で育ち、周りから馬鹿にされながらも努力してこの位をに入れた。その点は尊敬している。しかし、だからこそ残だ。君は自分の苦しみをっているはずなのに、同じ苦しみを者に与えようとした」
父は俺の方に線を移し、それから再び戸塚に向き直った。
「陽は私の名を使わず、片親育ちという境遇を隠さず、正々堂々と言葉を紡いで受験に臨んだ。その努力を、君は踏みにじった」
戸塚はただ震えながらうなずくこともできず、俯いている。反論の言葉はもうてこなかった。
父は柴田護部に向き直り、今の面接の記録を全て保するよう指示した。戸塚の処分については改めて検討すると告げ、柴田護部は静かにうなずいた。
そして父は、俺に向き直った。
「陽」
その言が、俺のを貫いた。ずっと1で戦ってきた。「片親育ち」という環境を言い訳だとわれたくない。誰の力も借りず、自分だけの力でいがりたかった。でも今、父がいる。俺のことを見守ってくれていた父がここにいる。
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目がくなった。涙が溢れそうになるのを必こらえる。
「おが自分の力で戦おうとしたこと、私はっていた。だから見守っていた。おが私を呼んでくれて、正直ほっとしたよ。ありがとう」 「父さん……」 「礼を言うのはい。おの採用はまだ決まっていないからな」
俺は驚いて父を見た。
「しろ。私がをすつもりはない。おの否はおの実力で決まる。柴田さんと教授陣の評価で公正に判断してもらう」
父は柴田護部と教授陣を見据えた。
「委員、柴田さん、陽の面接評価を改めて教えてくれないか? 戸塚君の偏見を抜きにして、純粋に彼の能力と適正だけを見た、どう評価する?」
柴田護部はし考えてから答えた。
「正直に申しげます。藤川さん……いえ、代さんの面接評価は今回の受験者のでトップクラスです。成績、臨実習の評価、志望の確さ、質問への受け答え、どれを取っても文句のつけようがありません」
教授陣の見は、髪の教授がうなずきながら答えた。
「同見です。代さんは非常に優秀な受験者です。戸塚さんの発言がなければ、満致で格でした」
そうか、と父が俺を見た。
「陽、おは格だ。この病院で研修医として働いてもらう」
胸の奥にいものがこみげた。本当に自分の力で受かったのかと問うと、父は「私は何もしていない。
おの実力が認められたんだ」と静かに答えた。
俺はくをげた。