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"片親の分際で、100年早い" 第11話

「片親の分際でこの病院に入ろうなんて、100いんだよ」

その言葉が、臓を掴まれたような衝撃だった。

「悔しかったら、親を呼んでこい!」

戸塚の声が面接に響いた。そして戸塚は最通告を突きつけた。

「帰れ、2度と来るな」

俺はその言葉を黙って聞いていていた。

——親を呼んでこい。

その瞬、俺ので何かが決まった。父の言葉がに蘇った。

《何があってもおは1じゃない。困ったら連絡しろ》

俺はずっと1で戦おうとしてきた。父と再会したことは誰にも言わず、片親育ちの苦労としてきてきた。父の力を借りることなく、自分の実力だけでを切りくと決めていた。

でも、今は違う。戸塚は俺に言った。親を呼んでこいと。履歴には父親欄が空だった。戸塚の目には、俺は寄りのない孤独な若者に見えたのだろう。誰にも頼れない、誰にも助けを求められないだと。

しかし、戸塚はらなかった。俺には父がいる。しかも、この病院のに——。

俺は静かにポケットにを入れた。指先にスマホの触が触れる。戸塚の声がまだに残っている。「悔しかったら親を呼んでこい」。片親を侮辱し、庭環境を蔑み、履歴を燃やした男が放った最の挑発。その言葉を俺は忘れないだろう。

だが、戸塚は致命な勘違いをしていた。

「分かりました」

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俺の声が静かに響いた。

「なに?」

戸塚が眉を潜めた。俺の反応が予だったのだろう。俺はスマホを取りした。画面を見る必はなかった。この番号は指が覚えている。学3で初めて会ったに渡された名刺の番号。あれ以来、何度も迷いながらも結局は連絡を取り続けてきた番号。

《おは1じゃない》

そう言ってくれたの番号を。

「おい、何をやっている」

戸塚の声が苛っている。しかし俺は無した。コール音が鳴る。静寂の、その子音だけが響いている。1回、2回、3回目で相た。

「今から、来てもらえますか?」

くそれだけを伝えた。状況を説する必はなかった。父には全てが見えているはずだから。

話の向こうからい声が返ってきた。

「分かった。すぐく」

俺はスマホをからした。戸塚が嫌そうな顔で俺を見ている。俺は戸塚の目をまっすぐに見据えながら、スマホをスピーカーモードに切り替えた。

「戸塚さん。『悔しかったら親を呼んでこい』とおっしゃいましたね」

戸塚が眉を潜めた。俺は続けた。

「——だそうです、父さん」

その言が面接を貫いた。が止まったかのような静寂。蛍灯の微かな唸りだけが空を満たしている。

戸塚の顔から表が消えた。まるでスローモーションのようにその表が変わっていくのが見えた。

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余裕に満ちた笑いが困惑に変わり、やがて恐怖にい何かがその目の奥に浮かんだ。

「父さん……?」

柴田護部が驚いた表で俺を見た。教授も互いに顔を見わせている。

「お、父親を呼んだのか?」 「あなたがそうしろと言ったんです」 「バカなことを! 父親がいないと言っていたじゃないか。誰を呼んだつもりだ?」

俺は何も答えなかった。ただ戸塚を見つめ返した。

沈黙が流れた。1分、2分。やがて、廊から音がづいてきた。規則正しい、しかし確かな音。その音が面接のドアので止まった。

コン、コン。

ノックの音が響いた。

「誰だ?」

答えはなかった。しかし、ドアがゆっくりといた。その瞬、戸塚の顔が真っに変わった。

ドアの向こうにっていたのは、50代半の男性だった。が混じった髪、穏やかな目元。しかし、その佇まいには言葉では説できないな威厳が漂っている。数千の命を救ってきた科医だけがまとうことのできる静かな圧力。をまとったその男性を見た瞬、面接の空気が変した。

柴田護部が息をみ、反射に姿勢を正す。教授の1子を蹴倒すほどの勢いでがった。

「委員……!」

代憲吾。学付属病院の委員科の世界権威として国内の医学会にその名を轟かせる200件以術を執刀し、成功率は98%。

医学雑誌の表を何度も飾り、学からの招聘が絶えない。この病院の、いや本の科の頂点につ男。

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