みかん小説
本棚

"片親の分際で、100年早い" 第3話

おそらく胸部の教授だろう。

「藤川陽です。本はよろしくお願いいたします」

礼し、指定された子に座った。

「藤川さん、まずは自己紹介と志望をお聞かせください」

柴田護部が穏やかな声でを切った。俺は事に準備していた答えを落ち着いて述べた。

「私が医師を目指した理由は、幼い頃に母をくした経験にあります。当は何もできませんでしたが、その無力が今の自分を形作りました。1でもくの命を救える医師になりたい。そのために科の最先端を学べる貴院を志望しました」

柴田護部が優しくうなずいた。隣の教授もメモを取りながら真剣に聞いている。しかし、央の男は違った。彼は俺の履歴をじっと見つめたまま、言も発しない。

「臨実習では科をに回られたとありますね。何か印象に残った経験はありますか?」

央の沈黙を断ち切るように、戸塚ではなく隣の教授が質問した。

「はい。5歳の女の子の術にち会ったのことが忘れられません。先性の疾患で、成功率は50%と言われていました。しかし執刀の先は最まで諦めず、12に及ぶ術の末、女の子を救いました。あのの執刀医の背を見て、私もこうなりたいといました」

「素らしい経験ですね。

広告

執刀の先から何か言葉をいただきましたか?」

「医療は技術だけじゃない。患者のを背負う覚悟が必だと言われました。その言葉は今でも私の胸に刻まれています」

柴田護部が満そうにうなずいた。隣の教授も好な表を浮かべている。このまま終われば、と俺はった。しかし、そうはいかなかった。

「ちょっといいかな」

それまで沈黙を守っていた戸塚が初めていた。その声はく、どこかたい響きを含んでいた。

「履歴を拝見したんだが、父親欄が空になっているね。これはどういうことだ?」

臓がねた。来た。この瞬が来ることは予していた。

「母がくなった、祖母に引き取られました。父のことは顔も名りません」

嘘ではなかった。父とは数に再するまで、本当に何もらなかったのだ。祖母は頑なに父のを隠し続けたからだ。

「ふーん。父親がいない。で、お母親は5歳のくなりました。交通事故だったか。履歴にそういてあるな」

戸塚の目がたくった。

「つまり君は両親共にいなく、祖母に育てられたと。典型な片親育ちというわけだ」

その言葉に、面接の空気が変わった。柴田護部がわずかに眉を潜める。

「はい。母がくなったは祖母に育てられ、祖母も2くなりました。

広告

それ以は1活しています。学費は奨学とアルバイトで賄いました」

戸塚は俺の言葉を聞きながら、履歴をめくっていた。その目はたく、まるで欠陥品を検品するかのような線だった。

「医学部6をバイトで、変だっただろうなあ」

見すると労いの言葉に聞こえたが、戸塚の元にはい笑いが浮かんでいた。同ではなく、値踏みだった。

「しかしね、藤川君。医療現というのはチームワークが命なんだ。庭環境が複雑なはどうしても関係に問題を抱えやすい。君のように片親で、しかも孤独となると、正直素がきいんだよ」

「お言葉ですが、庭環境と医師としての適正に相関関係はないと考えます」

俺は静に反論した。しかし、戸塚は聞くを持たなかった。

「片親のは精神定になりやすい。のコントロールができない。そういうデータもあるのだ」

に主張してくる。俺がそのデータの科学根拠を問うと、戸塚の表変した。

気なを叩くな!」

戸塚の声が急に鋭くなった。柴田護部が戸塚をいさめようとしたが、「黙ってくれ、これは事の問題だ」と蹴された。悔しそうに唇を噛む柴田護部隣の教授も居悪そうに線をそらしている。誰も戸塚に逆らおうしない。

権力とはこうもを臆病にさせるものなのか。俺は目の景を見ながらそうった。

戸塚は俺の成績が優秀なことは認めると言いながらも、この病院は成績だけでは入れないと続けた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: