"片親の分際で、100年早い" 第1話
「片親の分際でこの病院に入ろうなんて、100いんだよ」
目ので、俺の履歴が燃えていた。
丁寧にきげた経歴、志望、自己PR、6の努力を詰め込んだ1枚のが炎に包まれ、黒いへと変わっていく。面接にはの焦げる匂いが充満し、の面接官たちは凍りついたようにけずにいた。
戸塚俊彦——学付属病院の事部を務める男が、笑いを浮かべながら俺を見ろしている。
「悔しかったら、親を呼んでこい」
その言葉が、面接の静寂に突き刺さった。蛍灯のいがたく部を照らし、空調の音だけがく唸っている。教授陣は目をそらし、誰として戸塚を止めようとしない。を着た彼らはこの病院の最権威であるはずだ。しかし、事部という権力のに、全員が萎縮している。権力とはこうもを臆病にさせるものなのか。
俺は静かにポケットにを入れた。指先がスマホのたい触に触れる。
全ては、その3に始まった。
俺の名は藤川陽。今で24歳になる。
3の京、桜のつぼみが膨らみ始めた週末の朝。俺は自の鏡のにっていた。2週に国試験の格発表があり、無事に医師免許を取得する資格を得た。しかし、本当の勝負はこれからだ。臨研修先の面接。俺が志望したのは学付属病院。臓科では国内トップクラスの実績を誇り、最先端の医療技術が学べる環境がっている。
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古びたアパートは、朝が差し込むとしだけ温かくなる。築30のこの部は、学入学と同に借りた俺のだった。賃は5万円。医学部にしては質素な暮らしだが、自分で選んだだ。
鏡のでネクタイを結び直し、壁に貼った写真に目をやった。5歳の俺と母が緒に写っている。母の名は美鈴。この写真を撮った3ヶ、母は交通事故でくなった。買い物帰りの横断歩で、信号無のトラックにはねられたのだという。
俺はその、幼稚園で絵を描いていた。好きな母の笑顔を、クレヨンで懸命描いていた。黄のクレヨンで髪を塗り、ピンクのクレヨンで頬を塗り、きな笑顔を描いた。その絵を見せたら、母がどんなにぶだろうとっていた。
しかし、迎えに来たのは祖母だった。いつもは母が迎えに来るのに、そのだけは違った。祖母のはたく震えていた。
「お母さんは、くにったの」
祖母にそう言われた、俺は何も分からなかった。5歳の俺には、「く」という言葉のが理解できなかった。ただ、祖母の目が赤かったことだけを覚えている。
あれから19。父のことはあまり覚えていない。母がくなった、祖母が俺を引き取った。父は俺を引き取ろうとしたらしいが、祖母がそれを許さなかった。
「あの男のせいで、美鈴はんだんだ」
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祖母はそう言って、俺と父をわせようとしなかった。だから俺は、父の顔も名もらずに育った。祖母も俺が2のにくなった。それ以来、俺は1だった。
学費は奨学とバイトで賄った。医学部は6。普通の学部より2い分、もかかる。夜のコンビニ、週末の庭教師、休みの引っ越しバイト。眠を削りながら勉と仕事を両させる々は、今いしても体がきしむような記憶だ。
それでも、医師になりたかった。母を救えなかった無力が、俺を医学のへと駆りてた。
スマホが震えた。画面を見ると、通のメッセージ。
《頑張れ》
送信者の名は「父」と登録されている。い言葉だが、それだけで分だった。父とは学3のに初めて会った。学会の会で、向こうから声をかけてきたのだ。祖母がくなった、父はずっと俺を探していたらしい。
「会いたかった」
その言と名刺だけを残して、父はっていَّっていった。それ以来、々連絡を取りうようになった。仕事が忙しいらしく、直接会うことは滅にない。しかし、こうして所所でメッセージをくれる。
履歴の「父親」欄は空にした。祖母に引きされ、顔もらずに育った父のことなどきようがない。俺は自分の力でいがってきた。その事実だけで面接に臨むつもりだった。
「見ててくださいね、母さん」