"席次表から消された姉" 第9話
の、翔太の父親――鈴克己さんが緊急搬送され、ヶ入院していた関第総病院だった。
古い理のロビーには、薬品の匂いと、子の軋む音、診察を待つ齢者たちの静かなざわめきが満ちていた。 私は総案内には向かわず、当の入院棟であった階の脳神経科病棟へとエレベーターでがった。
族でもない、婚約者に過ぎない私が、当のカルテや記録を見せてもらえるはずがないことは分かっていた。個報保護の壁はい。 それでも、何かの掛かりを掴みたかった。姉があのヶ、何を背負わされていたのかを、この目とで確かめずにはいられなかった。
階のナースステーションのカウンターので、私は途方に暮れていた。 忙しそうにき交う護師たちに声をかける勇気がず、デイルームの窓際でち尽くしていただった。
「――あの、何かお困りですか?」
声をかけてきたのは、いユニフォームのにエプロンを着けた、代半ばほどの柄な女性だった。胸元の名札には『護補助者・森』とかれている。病棟の清掃や備品の補充、患者のの回りの世話を担当するベテランのケアスタッフのようだった。
「あ……すみません。あの、のに、こちらに入院されていた患者さんのことで……」
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私は躊躇いながらも、持参していたスマートフォンの写真フォルダをいた。 そこには、以翔太から送られてきた、倒れるの克己さんの写真と――そして、姉・綾の写真があった。
「のからにかけて、こちらに入院されていた鈴克己さんのご族……いえ、息子の婚約者の者です。その節は、変お世話になりました」
私が々とをげると、森さんは「鈴克己さん……」と呟き、井を見げて記憶を繰り寄せるように目を細めた。
「鈴さん……ああ、あの個にいらした、脳梗塞の鈴さんね」
森さんの表が、微かに曇ったのを私は見逃さなかった。
「……覚えていらっしゃるんですか?」
「ええ、よく覚えていますよ。度の半麻痺と、それから夜のせん妄がひどくてね。ナースコールを何度も押されたり、ベッドからを乗りそうとされたりして、のかかる患者さんでしたから。でも……何より印象に残っているのは、ご族の方の対応かしらね」
森さんは周囲をちらりと見回し、声を潜めて言った。
「奥様と、息子さん……お見いにいらっしゃるのは、いつも夕方の分くらいでした。そうなお召し物を着ていらしてね、病に入るなり、持参した除菌スプレーを部に撒き散らすのよ。『臭いが耐えられない』『空気が汚れている』っておっしゃって」
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臓が、嫌な音をててねた。
「お父様が失禁されて、シーツを汚してしまわれたなんて、奥様は汚物を見るような目でご主を睨みつけて、『なんてけない姿なの。鈴の恥を晒さないでちょうだい』って罵倒されて……息子さんも、をつまんで病のへてってしまわれてね。護師が『しお体を拭くのを伝っていただけますか』とお願いしても、『私たちはい個料を払っているんだから、そんな汚い仕事はそちらでやりなさい』って、蹴されたわ」
「そんな……」
めまいがした。 『母さんと交代で、万全の態勢で病していた』。 翔太のあの言葉が、どれほど醜悪な嘘であったかが、第者のから無慈に暴かれていく。
「でも」
森さんは、私の元のスマートフォンの画面――姉の写真を指差した。
「この方。この女性、鈴さんの姪御さんか何かかしら? 毎、夜遅くに来てくださっていたわよね」
息が止まりそうになった。
「……毎、来ていたんですか?」
「ええ、そうですよ」
森さんは確信に満ちた顔で頷いた。
「に入ってからだったかしら。毎晩、夜の頃にいらっしゃるの。ご自もお仕事をされているんでしょうに、いつも疲れたお顔をされていてね。でも、病に入るとすぐにエプロンをつけて、慣れた様子でお父様のの世話をしてくださるのよ」
森さんの瞳に、温かな、そして敬の籠もったが宿った。
「護師も夜勤帯はがりなくて、鈴さんのような度の患者さんに付きっきりになるのは難しかったの。