"席次表から消された姉" 第2話
「いいか、美奈。母さんはおの柄が般庭であることを、最初から目に見てくださってるんだぞ。それなのに、式当に介護士の姉がてきて、品な振るいや粗相でもしてみろ。おのがなくなるんだよ。結婚、親族の集まりでおが針の筵に座らされるのを防ぐために、母さんも僕もを鬼にして配慮してやってるんじゃないか」
配慮。 おのため。
その言葉の響きに、吐き気を催すほどの違がこみげてきた。 翔太と付きって。資系コンサルティング会社に勤める彼は、スマートで優しく、いつも私をリードしてくれる理のパートナーに見えていた。世田に広い邸宅を構える鈴は、域でも名士としてられ、母親の冴子さんは常に仕てのいい着物や級ブランドのスーツを纏い、柔らかな京都弁混じりの品な言葉遣いをするだった。
けれど、婚約が決まり、結婚式の準備が具体化するにつれて、その「品さ」の隙から、酷で粘りつくような選民が透けて見えるようになっていた。
私の着るウェディングドレスは、提携先のドレスショップで番いインポートものでなければ許されなかった。「鈴の嫁に恥ずかしくないものを」という冴子さんの向だった。 居の具も、私が用していたものはすべて「っぽい」
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と処分を迫られ、指定の級輸入具で揃えさせられた。 それらすべてを、私は「格式あるに嫁ぐのだから、私が背伸びをしてわせなければいけないんだ」と自分に言い聞かせ、耐えてきた。
だが、姉を否定されることだけは、絶対に呑み込めなかった。
の、両親が交通事故で急逝した。 当まだ歳だった綾さんは、内定していた京のアパレル企業への就職を辞退し、元で資格を取り、夜勤のある介護の仕事に就いた。しでも当を稼ぎ、私を学に学させるためだった。 の朝、あかぎれで血が滲んだ指先に絆創膏を何枚も貼りながら、お弁当を作ってくれた姉の背を、私は度だって忘れたことはない。
その姉を、この男は「排泄物の臭いが染み付いた」と切り捨てたのだ。
「……席次表、このままじゃ提できない」
私は震えるで席次表を掴み、バッグに押し込んだ。
「おい、美奈! 何するんだよ。今にプランナーに差し戻さなきゃいけないスケジュールなんだぞ!」
「をやす。私、このままじゃあなたと結婚式なんて挙げられない」
「はあ? 何を馬鹿なこと言ってんだ! もう招待状だって刷りがってて、式の内だって何百万も払ってるんだぞ! 姉貴の席で見栄を張るなよ!」
背からんでくる翔太の声を無して、私はラウンジをびした。
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自ドアを抜けると、のたいが頬を打った。涙が溢れそうになるのを、奥歯を噛み締めて必に堪えた。
鉄の駅へ向かうは、迷うことなく、ある所を目指していた。
練馬区にある、築を超える古い賃貸マンション。 私の、たったひとりの族が暮らす部だった。
* * *
駅から歩いて分ほどの宅。夕暮れのたい空気のに、どこかのからカレーの匂いが漂っていた。 階段をり、階の角部のインターホンを押す。
数秒、鍵のく音がして、ドアが細くいた。
「美奈? どうしたの、連絡もなしに……」
部着のに毛玉のついたカーディガンを羽織った姉、綾さんが驚いたように目を丸くしていた。 すっぴんの顔には隠しきれない疲労のが濃く、目のにはい隈があった。夜勤けで眠っていたところを起こしてしまったのだとすぐに分かった。
「お姉ちゃん……」
その顔を見た瞬、ラウンジで必に堰き止めていたものが決壊した。 界が涙でぐしゃぐしゃに歪み、私は玄関のがり框で、子供のようにしゃくりあげて泣き崩れてしまった。
「ちょっと、美奈、どうしたの? とにかくに入りなさい。寒いから」
綾さんは慌てて私を部に引き入れ、背をさすってくれた。 玄関に漂う、微かな消毒液と、昔から変わらない柑橘系のハンドクリームの匂い。
その匂いを嗅いだ途端、張り詰めていた糸が完全に切れ、私はにへたり込んだまま泣き続けた。