"3年間隠していた清掃員の母に、院長が頭を下げた" 第10話
をげるだけでは
検討会のあと、黒瀬はベルナールさんの症例の取りまとめからされた。患者側への説は別の医師が引き継ぎ、国際会議への発表者候補からも、黒瀬の名が消えた。
変更を伝えられた席で、黒瀬は元の予定表を見つめていた。
「発表の準備は、私がめてきました。それも認められないんですか」
院は彼のに、修正の稿を置いた。
「その準備に使う経過を、正確にけていなかった。指摘を受けても、訂正しなかった。その状態で、病院を代表して説を任せることはできません」
黒瀬は反論しかけたが、稿の自分の文章を見てを閉じた。今は記録の作成と報共について研修を受け、担当する症例の説資料も級医の確認を受けることになった。
会議をると、黒瀬が俺を呼び止めた。
「原田。お母さんに、直接謝りたい」
「母に聞きます。ただ、俺から許してほしいとは言いません」
黒瀬はし目を伏せてから頷いた。
母が承諾したのは、あのにいたスタッフも同席するい面会だった。仕事を終えた母は、瑞希や当の担当者とともに、会議の子に座った。
黒瀬は母のにち、くをげた。
「清掃の方だからと、話を聞こうとしませんでした。そのも、いただいた報を説からしました。申し訳ありませんでした」
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母はすぐには答えなかった。膝ののをほどき、顔をげた黒瀬をまっすぐ見た。
「謝ってくださったことは、受け止めます。でも、今すぐ気にしていないとは言えません」
黒瀬の背筋が伸びた。母は穏やかな調のまま続けた。
「私が昔、医師だったから話を聞くのでは、同じことがまた起きます。清掃をしていて気づくこともあります。私の同僚が何か伝えたときも、まず聞いてください」
「はい」
母はそれ以、彼を励まさなかった。黒瀬が約束を守るかどうかは、これからの仕事で見ていくことになる。
面会のあと、院も母に言葉をかけた。
「3、こちらでお姿を見つけたとき、静かに働きたいとおっしゃいましたね。ご経歴を話さないことと、職で困っていないか気にかけることを、私は緒にしてしまっていました」
母は首を振りかけて、やめた。
「これからは、私も困ったらお伝えします」
俺はその返事を隣で聞いた。母が相を気遣って、何もなかったことにしなかった。それだけでも、今までとは違っていた。
それから数週、ベルナールさんは慎にリハビリをめた。病棟を歩ける距がしずつ延び、療養を続ける施設へ移るが決まった。
移の朝、俺たちは病で最の確認をした。勢が並ぶ見送りにはせず、処置や説を終えたから持ちへ戻っていった。
母が顔を見せると、ベルナールさんはベッド脇の机に置かれた類を指した。訂正された経過説には、母の報提供と、そののチームの判断が記されていた。
「読みました。これを、族にも見せます」
通訳を通してそう言い、彼は母と俺へ微笑んだ。母は類の自分の名を度見てから、「どうか、ご無理をなさらず」とをげた。
俺は患者の荷物をえる担当者にを空け、母と緒に部をた。廊の窓から入るが、母の制の袖を照らしていた。
そこで院が、母を呼び止めた。
「原田先。落ち着いたところで、ご相談があります。これから、先にお願いしたい仕事のことです」
母は俺を見るのではなく、院を見て答えた。
「どんなお仕事でしょうか。まず、お話を聞かせてください」