"3年間隠していた清掃員の母に、院長が頭を下げた" 第7話
を脱いだのこと
その夜、俺は母ので、古い菓子箱の蓋をけるのを待っていた。母は台所から戻ると、湯呑みを置き、箱からい帳を取りした。
6歳だった俺の通院予定と、入院の期がき込まれていた。見覚えのある病院名の横に、学への連絡事項が並んでいる。母は閉じた頁を指で押さえ、し迷ってから俺のに置いた。
「臓の具が定しなくて、入退院を繰り返していたでしょう。お父さんがくなったのも、あの頃だったから」
父がいなくなったの静けさは覚えている。病で目を覚ますと、母が子を寄せ、俺の指を握っていたことも。けれど、その子に座るために母が何を調したのか、考えたことはなかった。
「最初は休職だったの。戻るつもりで、職とも話していたわ」
帳のろには、保育や事の支援先らしい連絡先があった。いくつかの番号に線が引かれ、別の番号が横にきされていた。
「頼めるところは探した。でも夜の対応まで続けてお願いするのは難しくて。退院しても、また急に具が悪くなることがあったから」
「それで、辞めたんだ」
「あのときは、それが私にできる選び方だった」
母は俺の顔を見てから、先を続けた。
「ずっと悔がなかったと言えば、嘘になるわ。あなたが落ち着いてから、戻るための研修も調べたの。
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でも暮らしを支える仕事を変える勇気がないうちに、れていたがくなってしまった」
俺は、母なら何でも迷わず決められるのだとっていた。事なもののどちらかを選び、選ばなかったほうをいす夜があった。その当たりのことを、今まで像していなかった。
「俺のせいで……」
にした途端、母が静かに首を振った。
「病気になったあなたのせいではないわ。私が迷って、私が決めたことよ。あなたに返してもらうために育てたわけじゃない」
台所の計が鳴った。卓の隅には翌の弁当箱が伏せてあり、子の背には洗った清掃が掛かっていた。
「病院で働いていたって、聞いていたのに。俺、勝に仕事を決めつけていた」
母は帳を閉じた。「さい頃は病院の話をすると、あなたがまた入院するのかと配したの。だからでは、あまり話さなくなった。あなたが医者を目指したときも、昔の私と比べてほしくなかったしね」
「でも、俺はになってから聞けた」
母は何も言わなかった。その沈黙を埋めるように言い訳を始めたら、今までと同じだった。
「あのの朝、廊で声をかけてくれただろう。聞こえてた。黒瀬先がいたから、無した」
母の目が、俺のほうへ戻った。
「元は科医だったとらなかったから、じゃない。清掃の仕事をしている母さんを、にられたくなかった。
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ごめん」
俺は膝のにを置いて、をげた。顔をげるまで、母は待っていた。
「聞こえていたのね」
責める声ではなかった。それがかえって痛かった。母は袖を指でつまみ、しだけ笑おうとして、やめた。
「次に会ったら、普通に挨拶してくれたら嬉しいわ」
「うん。そうする」
それだけで3分が消えるとはえなかった。俺は卓の湯呑みを持って流しへ運び、母を座らせたまま洗った。
戻ってから、黒瀬の稿について詳しく話した。母は最まで聞き、閉じた帳のにをねた。
「げさに取りげてほしいわけじゃない。でも、していないことを誰かがしたようにくのは、困るわね。あので話を聞いたたちまで、嘘を言っていることになるもの」
「事実が分かる形で、直してもらう」
母は今度こそ、はっきり頷いた。俺は病院から届いていた症例検討の案内をき、経過確認の担当を引き受けると返信した。
次に向きうのは、黒瀬だった。