"3年間隠していた清掃員の母に、院長が頭を下げた" 第6話
私を度救った
「30、私の命を救ってくれたのは、この方です」
通訳が伝えると、ベルナールさんは写真から指をし、母に向かってを差しした。母がそのを取る。清掃の仕事で荒れた指を、彼は両で包み込んだ。
「スミエ先。もう度、お会いできるとはいませんでした」
母は何か答えようとして、度を閉じた。喉の奥からようやくたのは、「お元気でいらしたんですね」という、い言葉だった。
担当者がいた古い術記録には、執刀に当たった医師として、母の名が記されていた。院がその記載を確かめ、静かに頷く。黒瀬の膝のでは、用していた説のが伏せられたままになっていた。
「あのとき私は41歳でした。支援物資を届けにった先で負傷し、に帰れないのだとっていました」
ベルナールさんは息をえながら話した。瑞希が顔と呼吸を確かめ、通訳にも急がなくてよいと伝えた。
「でも私は帰れた。娘の成を見られました。医療を必とする所に、またや物を送ることもできました」
彼は机のの写真を見た。そこに写る若い母は、杖をつく男性のすぐ隣で、まぶしそうに目を細めていた。
「退院、を送りましたね。次は私が、医療を届ける側になりますと」
通訳の言葉を聞いた母が、今度ははっきり頷いた。
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「受け取りました。あのお、今もにあります」
「しずつですが、続けてきました。今の財団につながった、最初の約束でした」
母の膝に置かれた封筒が、わずかに揺れた。俺がただの古い写真だとっていたものの先に、会ったこともない族の暮らしや、医療を待つ々のが続いていた。
「あれから30です。またここで、私を助けてくださった」
母は首を横に振り、執刀した医師のほうへ線を向けた。
「今回は、こちらの先方が術をしてくださったんです」
「承しています。皆さんに謝しています。そして、あなたの言葉が診断のきっかけになったとも聞きました」
術の説で担当者が聞き、本にも伝えていたのだ。ベルナールさんは母のをすと、院へ向き直った。
「私の治療について説を残すなら、この方がしてくれたことも、正しくいていただきたい」
院は頷いた。「もちろんです。経過を確認し、正確な内容に直します」
黒瀬がを持ち直した。
「ただ、今回の血が以の術部位で起きた点についても、慎に確認する必が……」
「そこは血管科で確認しています」
担当の医師が、穏やかだが確な声で引き取った。
「い過の術部位に病変がじたことと、その術に過失があったことは別です。今ある資料だけで、者を示すことはできません」
黒瀬はの端を揃えた。それ以は何も言わず、院が説の続きを担当した。必な確認を終えると、瑞希が患者の休息を促し、そのは引かずに終わった。
廊へた母は、カーディガンの袖を直した。俺はその隣を歩きながら、これまで何度もみ込んできた言葉を探していた。
「母さん、すごい仕事をしていたんだね」
母はし笑った。「緒に働いたたちに、ずいぶん助けてもらったわ」
褒められることに慣れていない笑い方だった。俺はそこで話を終わらせたくなかった。38歳で写っていた写真と、40歳でを脱いだ母のに、俺のらない2がある。
「28、どうして辞めたの?」
母はを止めた。病棟の扉が閉まり、廊には俺たちのだけが並んでいた。
「あなたが6歳のときのこと、どこまで覚えている?」