"3年間隠していた清掃員の母に、院長が頭を下げた" 第5話
30の写真
翌、本の依頼を受けた財団の担当者から、古い資料の写しが届いた。現の治療に必な記録として、担当チームにも共された。
当の術と退院の経過をまとめた面には、腹部脈の損傷と再建について記載があった。専科が確認をめる方、俺は添付された写真を見ていた。
母が持ってきた写真より、しに撮られたものらしい。仮設診療所ので、杖をついた男性が医療スタッフに囲まれている。表は若いが、目元には病のベルナールさんと通じるものがあった。
写っている母は38歳だった。今の俺と、わずか4歳しか違わない。
俺には、患者の族に説するだけで帰宅まで言葉を引きずるがある。母はその齢で、言葉も設備も分でない所にち、の命を預かっていた。
「やはり、以の再建部だったんですね」
背から黒瀬の声がした。彼も資料を見ていた。
「過の術式は確認できました。今は血管科が、今回の所見と照らしわせています」
「だとすると、あまり美談にするのはいんじゃないか。昔の術が原因で、今回の血が起きたという見方もある」
俺は写真から顔をげ、黒瀬を見た。「同じ所に異常が起きたことと、当の術に問題があったことは同じではありません」
「断定はしていない。
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そこまで確認してから名をすべきだと言っているんだ」
黒瀬は資料を机へ戻した。の角が、写真のの母の顔になった。
母が清掃員なら、説にだと言う。昔の科医だと分かれば、今度は過の術を疑う。結論を確かめたいのではなく、母の名をさずに済む理由を探しているように見えた。
「稿は、あのまま使わないでください」
俺は黒瀬に告げ、修正を求めている経過と今回の資料を、院にも確認してもらうことにした。母の経歴だけを盾にするのではなく、今の点で何が分かり、何がまだなのかを分ける必があった。
その、母が写真を返してもらいに来た。俺は透な袋に入れたまま渡し、写っている若い母を指した。
「この仕事を辞めたのは、いつ?」
「28。あなたが学にがったよ」
母は封筒のを閉じた。俺の記憶にあるそのは、教よりも、病院の窓から庭を眺めていたがかった。
続きを尋ねようとしたが、患者側との説のがづいていた。母にも同席をお願いしたと伝えると、彼女はしばらく封筒を見つめてから頷いた。
説は、患者の体調を確かめたうえで、病でだけうことになった。本が望み、院と担当の医師、通訳、それに母が集まった。瑞希は状態を確認できる位置にっていた。
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母は仕事を終えていたが、制のにいカーディガンを羽織った姿だった。俺は入で待っていた母を、自分の隣の子へ案内した。
黒瀬が経過の説を始めた。術とそのの回復について話したあと、診断に至った部分を、『私たちがい段階で血管の異常を疑い』とまとめた。
母の指摘には、触れなかった。
俺がをこうとすると、ベッドのでベルナールさんがをげた。通訳がを寄せる。彼はゆっくりと話し、それから母の顔を見た。
「その説のに、私からお話ししたいことがあるそうです」
通訳の声を聞いて、黒瀬は持っていたを膝へろした。
担当者が、取り寄せた写真を患者のに置いた。彼はそこに写る医療スタッフを順に眺め、ある顔ので指を止めた。
30の、母の顔だった。
その指を見つめていた母が、息をのみ、患者のほうへ顔をげる。ベルナールさんは微笑んでから、今度は院と黒瀬へ線を移した。
そして、母を指したまま、はっきりと話し始めた。