"3年間隠していた清掃員の母に、院長が頭を下げた" 第2話
院がをげた相
院は入までむと、清掃の母にくをげた。
「原田先。患者さんについて、気づかれたことを教えてください」
黒瀬の元がわずかにいた。俺も、母と院を交互に見た。母に向けられた『先』という呼び方を、自分のでうまく結びつけられなかった。
奥では瑞希たちが処置を続けている。院も顔をげるとすぐに応援の医師へ対応を託し、母が話せるだけの所を入の脇に作った。
「久先、私はもうく現をれています。診察を引き受けられるではありません」
「承しています。今の治療は担当のチームがいます。先がお持ちの報を、お聞きしたいんです」
母は清掃カートを壁際の所定の所へ戻し、指を清潔にした。いつもの仕事を終えるような作だったが、その背に俺は度もらなかった緊張を見ていた。
「原田君のお母様は、科の先だ。私はの救援現で指導を受けた」
院の説は、それだけだった。
子どもの頃、母が病院で働いていたことはっている。けれど俺の記憶に残っているのは、弁当を詰めるや、夜遅く洗濯物を取り込む姿だった。いつからか、護助のような仕事だったのだろうと勝にっていた。
医学部に入ったあとでさえ、何をしていたのか、きちんと尋ねたことがなかった。
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「ベルナールというお名を聞いて、気になったんです」
母は患者のほうを見ながら言った。
「30、救援先で腹部をひどく傷めたフランスの男性がいました。脈が損傷していて、血管をつなぎ直す必があった。あの方かもしれません」
「傷痕だけで、そこまで分かるものですか」
黒瀬が尋ねた。母は首を横に振った。
「傷だけでは分かりません。同じ患者さんかどうかも、まだ確かではありません。ただ、血管を再建した既往があるなら、臓以にも急いで調べる所があります」
そこで血管科の医師が到着した。俺は循環の状態と腹部の症状、採血の変化をまとめて伝えた。医師は話を聞きながら患者を診察し、過の術について母にも質問した。
「元の血管と、置き換えた部分をつないだ箇所ですね」
「はい。もし同じ術なら、お腹の奥のきな血管です。から見える血がなくても、はできません」
母の答えを聞いて、医師は検査と術への連絡を並してめるよう指示した。部のきが変わった。診断名の分からない焦りが、確かめるべき所のある緊張へと変わっていく。
俺は必な検査を配しながら、入につ母へ声をかけた。
「母さん、昔は術をしていたの?」
「その話はあとで。今は、あの方のことをお願い」
穏やかな声だった。
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それなのに俺は、幼い頃、をした夜に額へ置かれたのことをいした。慌てずに呼吸を確かめ、俺の目を見ていた母を、今になって別の角度から見ていた。
ベッドの向こうで、通訳が患者の言葉を拾った。古い術を受けたのは、きな災害のあとだったという。
母が唇を結んだ。院も、その表を見て何かを察したようだったが、問いたださなかった。
血管科の医師が俺を呼んだ。
「腹部脈の再建なら、つなぎ目の異常を考えます。血の所をく特定したい。搬送できる状態か、もう度確認しましょう」
俺は患者のそばへ戻った。母の言葉は、もう廊で遮られた清掃員の独り言ではなかった。命をつなぐために、チームが確かめるべき報になっていた。
その血管が今どうなっているのか。答えを待つ余裕は、くなかった。