"全員が揃えた同じ嘘" 第14話
……でもね、律君。獄は、そこから始まったの」
は唇を噛み締め、悔しさに顔を歪めた。
「警察官が何も入ってきて、救急が呼ばれた。父は怪をしてたけど、識ははっきりしてた。そして……警察官の腕を掴んで、叫び始めたの。『この女教師を逮捕しろ!』って」
「……逮捕?」
「父は、ものすごく狡猾なだったのよ」
の瞳に、たいりのが宿った。
「父は叫んだわ。『自分は正当な親権者だ。別居の妻が娘を連れったから、父親として話しいに迎えに来ただけだ。それなのに、この担任教師は自分を審者扱いし、娘をに法に監禁した。話しいをしようと扉をけたら、鉄パイプでを殴り殺されそうになった。これは殺未遂だ!』って」
「そんな滅茶苦茶な言い分、警察が信じるわけないだろ!」
「信じる信じないの、問題じゃなかったのよ」
は首を横に振った。
「法律の壁だったの。当、母が申してていた接禁止命令は、まだ裁判所で続きの途だった。正式な決定通が父に送達されるの、ほんの数の空期だったのよ。法には、父はまだ『親権を持つ保護者』だった。方の先は……学の管理職に無断で、児童をの施錠できる部に連れ込み、から鍵をかけさせた。それは学の保管理規則から見れば、らかな『越権為』であり、法な続きを無した『私な拘束』に見えてしまう余があったの」
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言葉がなかった。 政の末端で働く私には、その恐ろしさが痛いほど理解できた。 法律や規則というものは、に者を守る盾ではなく、続きの瑕疵を突いて加害者が振り回す凶器に変貌する。
「警察署へ連れてかれそうになる父を、救急隊員が病院へ運ぼうとした。その、父はのにいたと教育委員会の職員に向かって鳴り散らしたの。『この事実をマスコミに全部ばらしてやる! 緑ヶ丘学の教師が児童を監禁し、親を襲ったって記者クラブに垂れ込んでやる! 学も教育委員会も、全員裁判にかけて破滅させてやる!』って」
「……たちは、保にったのか」
私の問いに、はしそうに頷いた。
「学側はパニックだった。もし父がマスコミに騒ぎてて裁判汰になれば、学の全管理責任が問われる。なぜ審者の侵入を許したのか、なぜの教員が気づかなかったのか、なぜ児童相談所との連携が遅れたのか……。も教も、自分たちのキャリアと学の評判を守ることしかになかったのよ」
「それに……」
は息を詰まらせ、私を真っ直ぐに見つめた。
「もし裁判になれば、証として法廷にたされるのは誰だとう? から鍵をかけた輔君よ。そして……『先はに帰りました』って親に嘘をついた、あなたたちの子どもたちよ」
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を鈍器で殴られたような衝撃がった。
「たちは警察に追及されるわ。なぜ子どもたちが揃いも揃って同じ嘘をついたのか。誰が嘘を指示したのか。警察や弁護士から、歳の子どもたちが厳しい尋問を受けることになる。偽証をされたんじゃないか、裏わせをしたんじゃないかって……。の子どもの未来が、あの法廷闘争の沼に引きずり込まれるところだったのよ」
指先がたくなっていくのをじた。 あの、私たちが守ろうとした嘘は、もし事件が公になれば、逆に私たち自を焼き尽くす炎になるところだったのだ。
「その夜、で話しいがわれたわ」
は昨のことのように、鮮に語り始めた。
「私は別の応接にいたけど、壁越しに鳴り声が聞こえてた。父の弁護士を名乗る男、教育委員会の、、そして……に包帯を巻いた倉先。父側の求はだった。『事件を公にしない代わりに、学側が非を認め、あの女教師を即刻懲戒免職にしろ。そして娘を今すぐ父親の元へ引き渡せ』って」
「そんな理尽が通るはずがない!」
「通らなかったわ。……先が、その求を全部叩き潰したから」
の声に、い誇りと、それ以の痛切なしみが混ざりった。
「先はね、の机のに、枚のを叩きつけたの。
退職届だった」
「退職届……」
「先は言ったわ。