"3か月寝たきりの娘を、婿に黙って連れ出した日" 第9話
きている娘の声
「当は、健さんの説に納得していたのではありませんか」
証席で、私は弁護の問いを聞いた。マイクの向こうに健が座っていたが、その顔を見て答えを変えないよう、尋ねたの方へ目を向けた。
「娘を治すためだと信じていました」
自分がそう返事をしたメッセージも、証拠に含まれていた。私はその事実を否定せず、何を見て、何をらなかったのかを話した。
「けれど、娘に会わせないことや、必な診察を受けさせないことまで認めた覚えはありません」
部に入れなくなった経緯を尋ねられ、私は鍵のことを説した。最に、異臭に気づいた朝のことを話した。話しながら喉が詰まったが、娘を運びしたところまで、自分の声で答えた。
公判が始まるまでに、季節は何度か変わっていた。娘はい入院を終え、私と病院に通いやすいさな部で暮らしていた。裁判所へくも、通院のも、娘の体に無理がかからないよう予定を組んだ。
証として話し終えたあとも、私はかれる裁判にを運んだ。健は、妻を助けるつもりだったという説を続けていた。
ある期、検察官が診断資料について尋ねた。の医師から届いたはずの文に、健が自分で作ったものがあることは、端末の記録から確かめられていた。
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「必な報をまとめたんです。妻のために、僕なりに調べました」
「その文に、医師が診断したかのように名を記載したのはなぜですか」
健は、族に説する必があったからだと答えた。私たちをさせるためだった、と。
その文を信じた私は、娘の受診を諦めた。健が言うが、何を止めるために使われていたのか、法廷では通信記録と緒に示されていった。
薬の鑑定、購入の記録、病院で確認された体の状態も説された。さやかが受診を求めたことと、それを妨げた言が、彼の言う献な病と照らしわされた。
由美とのやり取りが取りげられたとき、健は顔をげた。
婚したら保険のは入らない。病気なのだから、もうし待てばいい。
私が初めて見たとき、付を何度も確かめた文章だった。今はその文章に、娘が同じ期にどれだけ衰していたかという記録がなっていた。
健は、相の女性をさせるための言葉にすぎなかったと説した。
その説を聞いていると、何をしても誰かのためだったことになるのだとった。私をさせるため、由美をさせるため。そので、さやかだけが助けを呼べなくなっていた。
娘が話すには、事に医療側や支援の担当者とも相談し、休憩を取れるよう準備した。
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私は自分が話すよりも緊張していたが、娘に丈夫かと繰り返すのはやめた。
「終わったら、で待ってるね」
それだけを伝えると、さやかは頷いた。
娘は、覚えていることと、薬の響などで記憶がはっきりしないとを分けて話した。分からないところを聞かれても、分からないと答えた。
ベッドに残した薬について尋ねられると、しを置いた。
「んでいたものを、お母さんにってほしかったんです」
2錠を隠した所と、その理由を、自分で説した。母親に何か言われてそう考えたのかという問いには、顔をげた。
「隠したのは私です。お母さんには、そのとき会えませんでした」
傍聴席から娘の声を聞き、私は鞄を握っていたをいた。あの、扉越しにやっと聞こえた声が、今は健にも届く所にあった。
別の期には、被害者として今の気持ちを述べた。娘は用したを持ち、ゆっくりと読んだ。
「今も、傷の痛みで眠れないがあります。体力が戻らず、と同じようには働けません。きていたから、元どおりになったわけではありません」
を持ち直す音がした。私は膝ので、自分のをで押さえた。
「夫は、私がいなくなったあとのおやむを考えていました。私はただ、別のお医者さんに診てほしかった。母に会いたかった。
それも自分で決められませんでした」
そこで娘は、から目をげた。
「これからの暮らしは、自分で決めたいです。したことに見う処罰を求めます」
判決が言い渡されたのは、救から1余りが過ぎたころだった。
「被告を拘禁刑20に処する」
裁判の声を聞いたとき、私は隣にいる娘の肩へを伸ばしかけ、膝へ戻した。さやかは自分のを組み、続く言葉を聞いていた。
判決では、保険を得る目や継続な加害、適切な医療からざけたこと、娘が受けたな被害について述べられた。健の治療のためだったという説は、認められなかった。
健がこちらを見た。私はその目に答えを探さず、娘の方へ体を向けた。娘が席をつときに必な鞄を持ち、歩き始めるのを待った。
建物をると、さやかは途のベンチに座りたいと言った。私も隣へ腰をろした。ひと息ついたあと、娘が尋ねた。
「お母さん、これからも、あのには戻らなくていい?」
「いいよ」
そう答えると、娘はようやく背もたれへ体を預けた。
「じゃあ、今度はどんなところで暮らしたい?」