"3か月寝たきりの娘を、婿に黙って連れ出した日" 第3話
ベッドの縁に残ったもの
翌朝、私はたけしので自宅へ戻った。警察は令状を取って捜索に入るところで、部の配置や娘の様子を説してほしいと頼まれていた。
玄関で鍵を渡すとき、いつもの癖で靴箱のを見た。健のの鍵を置く皿が空だった。それだけで、のでしきな声をしてもよい気がした。
寝へ続く階段には、昨私が落としたスリッパが片方残っていた。拾おうとして、刑事にそのままでいいと言われた。私は壁にを添えてがり、扉のからを見た。
ベッドは空だった。そこに娘がいないことを確かめて、ようやく息をく吸えた。
「こちらの端です。運ばれるに、娘がを伸ばしていました」
私が指すと、袋をした担当者が位置を確かめ、まず写真を撮った。シーツをしずつよけ、マットレスと枠のを確認していく。その元を、私は入から見守った。
赤いものが見えた。
最初は糸くずかとった。取りされたさな粒が、元のかりを受けた。担当者はさらに隙を調べ、もう1つ見つけた。
「錠剤が2錠あります」
ベッドのくに置かれた容器とは別に、そこだけに隠れるように残っていた。私は取っのない所を握ろうとして、戸枠に指をてた。
あの細い指は、何度ここへ伸びたのだろう。
健がこの部をたあとに、声をさず、音を気にしながら。
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そう考えかけて、私は自分の像と、実際に見たことを分けた。娘が話せるようになったら、ちゃんと聞こうとった。
「その薬で、何が分かりますか」
「成分を調べ、病院の検査結果などと照します。ここで見つかったという事実も記録します」
刑事の返事は慎だった。それでも私は、昨の娘の作を見落としたままにしなくてよかったとえた。2錠はそれぞれ確認され、私のに触れることなく保全された。
台所でも、健が娘の事だと言っていたものが調べられていた。蓋つきの容器のには、がかったペーストが残っていた。以、私がおかゆを作ると言うと、たんぱく質や塩分を勝に与えるなと叱られたことがある。
蔵庫の取っにをかけていた私は、そのままを引っ込めた。あのときと同じ作をしたことに気づき、今度は刑事へ自分から話した。娘の事を誰が作り、私はどこまで関わったのか。覚えている範囲を、曖昧なところは曖昧だと添えて伝えた。
寝の棚には、透な袋に入った類が何冊かあった。診療関係の資料に交じり、娘の名が表に見えるファイルもあった。担当者が確認している、私は階段ので待った。
健が帰るに片づけなければ、とう必はもうなかった。
病院に戻ると、さやかはまだ集治療を受けていた。
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目に見えて元気になったわけではない。護師から、呼吸や血圧を確かめながら治療を続けていると聞き、私は持参した着替えの袋を膝に載せた。
午、健への連絡について、病院と刑事に相談した。来ても娘のいる所へ勝に入れないよう、対応は決められていた。私は指示を受けたうえで、搬送したことと、説を受けに来てほしい旨を送った。
すぐに携帯が鳴った。
「何をしたんですか。誰の許で連れしたんです」
隣の刑事が、私を見てさく頷いた。私は子の背に体を預け、質問には乗らなかった。
「病院で説を聞いてください。さやかは治療を受けています」
「だから、その治療が危険だと言ってるんです!」
受話から漏れる声に、向かいの護師が顔をげた。以なら、相をらせた自分の言い方を考え直していた。私は病院名と受付の所を伝え、通話を終えた。
夕方、健はさな旅鞄を持って現れた。濃紺の着をえ、受付には丁寧にをげたが、私を見つけると唇を結んだ。
「さやかはどこですか。すぐに会わせてください」
病棟へ向かおうとする彼を職員が止め、面談へ案内した。私は医師の隣に座った。入には警備員がいて、刑事もくで待していた。
健は鞄から類を取りし、机のへ滑らせた。
「の専医の指示です。
僕は医療器の会社を経営していますから、受け入れ先も配できます。そちらの処置は止して、退院の類をください」
説を始めようとした医師を遮り、彼は胸ポケットからペンを抜いた。私へ向けた目には、で何度も見せた苛ちが戻っていた。
「妻のことは、夫の俺が決める。責任は俺が持つから、類をしてくれ」